西武大石達也投手(23)が、圧巻の奪三振ショーを演じた。1日、高知・春野での韓国LG戦に先発し、4回を2安打無失点。3回には3者連続三振を奪うなど、毎回の7奪三振で、6つを直球で奪った。「久しぶりに真っすぐで三振を取れて、ホッとしています」と手応え十分。6球団競合の末に入団した大器が、開幕ローテーション入りへ、猛アピールを見せた。

 指先に全神経を集中させた。3回2死、大石が投じた140キロ直球に、打者のバットが空を切った。直球に強いとされる韓国人打者に対し、ウイニングショットは全て直球で3者連続三振。キレ、威力ともに抜群だった証しだった。「指のかかりが良かったし、久しぶりに真っすぐで三振を取れて、ホッとしています」。本能のままに腕を振った奪三振ショーだった。

 「7割7分2厘」。この数字が、大石の成長を物語る。この日は57球を投じ、44球が直球。3回までに限れば、40球中35球が直球で「8割7分5厘」が直球だった。最速155キロをマークした早大時代は「抑えだったんで8割が真っすぐ。プロでは半々か6割でした」と説明。直球で押せた裏には、大石特有の“武器”があったからだった。

 大半は130キロ台後半だったが、打者のバットはクルクル回った。球速表示とは別次元の威力に、打者は困惑。バッテリーを組んだ岳野が「表示よりボールがきていた。球のスピンがいいので、前に飛ばなかった」と評するキレだった。入団以来、ボールを受ける田原ブルペン捕手は「初速と終速に差がないのが大石の特長」と言う。中島によれば「目の錯覚というか、対応しにくくなる」現象が、大石のボールにはあった。

 ルーツとなるのが、父博美さん(61)の教えだ。柳川商(現柳川)でエースとして活躍した父と、幼い頃から猛練習。耳にたこができるほど言われ続けたのが「リリースにだけ力を込めろ」だった。「高校とか、大学でフォームを変えたこともあったけど、それだけは小さい頃から変わりません。今もです」と強調するほど、大石の投球にとっての根幹。リリースポイントへの強い意識が独特なスピンを生む。

 クレバーな一面も進化の跡だった。4回無死一、三塁では配球を一変。フォークで空振り三振、スライダーで併殺打を奪うなど、ウイニングショットに変化球を選択した。17球中8球が変化球だったように、ピンチでも冷静だった。昨季は右肩痛などで、1軍登板はゼロ。今季は対外試合3戦で計7回無失点、開幕ローテーション入りへ、好アピールを見せるが「(球速は)見栄えが悪いというか、物足りなさはあります。145キロくらいはほしい」とポツリ。体に染み込んだ速球派投手としての意地をのぞかせた。【久保賢吾】