<中日4-2広島>◇30日◇ナゴヤドーム

 “スター”が共演した。23年目の広島前田智徳外野手(40)と、開幕戦で1軍デビューを果たした堂林翔太内野手(20)が、あわやパーフェクトゲームの窮地を救った。7回まで完全投球を許していた吉見を、栗原の安打で攻略の糸口を見いだす。堂林がプロ初安打でチャンスを広げ、前田智が今季チーム初打点をマークした。ベテランと若手が融合し、12年シーズンに新たな可能性を感じさせた。

 シャットアウトを免れた。8回2死二、三塁。「代打前田」がコールされると、三塁側スタンドからこの日2度目の大歓声がわいた。4点を追う展開で、前田智の12年シーズン初打席が巡ってきた。1ボール2ストライクと追い込まれながら、卓越したバットコントロールで対応。外角130キロのフォークをすくい上げ、中堅前に落とし2点をもぎとった。今季チームの初打点は、23年目のベテランのバットから生まれた。

 前田智

 (球種は)分からないよ。食らいついただけだよ。

 2000本以上、安打を放ち続けて生きた体が、反応した。08年以来となる開幕戦での安打は、未来のスター誕生を祝うかのような一打だった。お膳立てをしたのは1軍デビューを果たした堂林だった。

 試合前のスタメン発表で、「7番サード堂林」とアナウンスされると、地元ナゴヤドームのファンからは、声援よりもどよめきに近い声が上がった。デビュー戦で、4回の守備機会で失策を犯したが、バットで返した。8回先頭の栗原が中前で完全試合を阻止。「ずっとゼロで来ていて、点を取るならここしかないと思っていた」。集中力は最高潮。セットポジションになった吉見の内角シュートを引っ張った。三塁線を破る二塁打。両親が見守る中で、プロ初安打を放った。

 堂林

 1本出るのと出ないとは違う。開幕戦に出たことを自信にしたい。緊張したし、独特だった。

 先輩の言葉が身に染みた。合同自主トレ中、前田智にハッパをかけられた。「10年、20年前は3年目でダメなら田舎に帰ったもんじゃ」。3年目の今年を勝負の年と位置づけた。苑田スカウト部長からも「今年ダメなら辞めろ」とジョーク交じりに声をかけられ「はいっ」と返事した。

 スターと次期スターの共演が、開幕黒星の悲壮感を拭い去った。チームに新たな風が吹き込まれた。【鎌田真一郎】