<西武2-3日本ハム>◇19日◇皇子山

 突然まわってきたピンチにも、動揺は見られなかった。4回だ。嶋に3球を投じた日本ハム先発ウルフに異変が生じ、急きょマウンドへ送られたのはプロ6年目、1軍での実績がほとんどない植村祐介投手(23)だった。無死一塁から、星秀をスライダーで見逃し三振。続く炭谷をカーブで空振り三振に仕留めると、5回は簡単に3者凡退。緩急を自在に操り、完璧なリリーフでプロ初白星。「長かったですね…本当に」。苦節6年でつかんだ勝利。言葉に実感がこもった。

 88年生まれの23歳。“ハンカチ世代”の1人だ。北照高時代には、当時駒大苫小牧高の楽天田中としのぎを削った。ともに関西出身で、チームの大黒柱。意識しないわけがない。甲子園で全国的に脚光を浴びた田中の陰で、植村は常に「2番目」の存在だった。

 プロ入り後も2人の構図が大きく変わることはなかった。1年目から11勝を挙げた田中とは対照的に、植村にはなかなか活躍の機会が訪れない。1年目は出場2試合、2年目1試合…。その後は3年連続で1軍での登板機会なし。「焦りはなかったですね。急にうまくなるものではないので、コツコツやって行こうと思ってやってきた」。将来が見えない中で、島崎2軍投手コーチの言葉に救われた。「お前は、気持ちでは誰よりも強い」。活躍の日を虎視眈々(たんたん)と狙っていた。

 念願のウイニングボールは「両親に渡したいと思います」。フラッシュに照らされた顔は、誇らしげだった。【中島宙恵】

 ▼日本ハム6年目の植村がプロ初勝利を挙げた。大阪出身だが北照からプロ入りし、球団の北海道移転後では、道内の高校出身者としても初勝利となった。北海道関係では、JR北海道から入団した星野八千穂(長野出身)が08年に2勝している。本拠地移転前は、90年入団の有倉雅史(日体大-北海)が93年までに8勝をマーク(在籍は95年まで)。NTT北海道から92年入団の島崎毅(千葉出身)は通算20勝している。