<ロッテ6-1ヤクルト>◇24日◇QVCマリン

 内角高めへの1球が、ルーキー左腕の分岐点となった。ロッテ藤岡貴裕投手(22)はヤクルト戦で初回に制球が乱れ、1死満塁の危機。だが5番畠山の初球に内角高めのボール球で空振りを取ったのを機に立ち直った。7回無死満塁のピンチは救援の内の力投に助けられ、1失点の粘投で4月30日ソフトバンク戦以来の4勝目を挙げた。この1カ月は不調に苦しみ、交流戦デビュー戦も負ければ、ズルズルと失速しかねない状況だった。瀬戸際での1球が、藤岡をよみがえらせた。

 試合の運命を分ける1球は常に存在する。だが藤岡の投じた球は、この試合のみならず今後のシーズンを占う1球だったかもしれない。「あれがボールだったら、どうなっていたか…。大きな1球だった」。ホッと言葉を吐き出した。

 それは1回1死満塁で5番畠山に投じた初球だった。そこまでの伏線がある。大物ルーキーとして駆け抜けた2カ月。だがこの日は多くの不安材料があった。

 (1)最近4戦の20回2/3で13失点の不調

 (2)中10日と間隔が空いた先発

 (3)オープン戦を通じて初となるセ・リーグとの対戦

 (4)人生初のナイター登板

 (5)マリン名物の強風

 複合要素が絡み、初回に大ピンチを迎えた。1死から野口に安打を許し、直球、変化球ともに制御が乱れた。8球連続ボールで連続四球。(1)~(4)の要素も多いが、(5)の影響も大きい。バックスクリーンからホームへ5~6メートルの強い風。バックネット付近で跳ね返り、投手には向かい風になる。投げた球は高めに浮く。「今まで、こんなに強い風はなかった。初回(の乱れは)はそれが原因かも。高めに浮くから抑えようとして、下へ引っ掛かる。でもそれは言い訳になる」。初体験の“マリン風”に苦しんだ。

 8球連続ボールで「ストライクがどうしても欲しかった」。初球、畠山の142キロの内角高めの直球は浮いた。「見逃されたらボールだった」。だが畠山は強振し、バットは空を切った。満塁の初球を狙うセオリーは存在する。それでも、もし9球連続ボールだったら…。「あれがボールだったら、状況は全然違った。ストライクが入って落ち着けた」。カウント2-2から再び内角高めの直球を投じた。感覚が違った。「高めに浮いた。でも指にかかった球だった」。空振り三振でピンチを切り抜けた。

 最近の不調は変化球の精度が落ち、直球を狙われていると分析。修正を図り、ブルペンでは1球種につき2、3球多く投げ込んだ。やるべきことをやり臨んだ一戦。この日、崩れていたら藤岡は迷宮の奥に入り込んでいただろう。今季を終えた時、ターニングポイントとなる1球になるかもしれない。【広重竜太郎】

 ▼ロッテ藤岡が4勝目。今季新人では広島野村の3勝を上回り、トップとなった。ヤクルト打線に被安打8、与四球4ながら1失点。藤岡の走者得点圏被打率1割8分9厘はパの規定投球回到達19人中6位で、走者を背負ってから粘り強い。