「じゃじゃ馬」で首位固めだ。巨人原辰徳監督(53)が、9日の西武戦(東京ドーム)で今季初先発する東野峻投手(25)に勝利を厳命した。初優勝が視野に入った交流戦最後の4連戦。昨季の開幕投手が、ローテの谷間でようやく登場する。2軍でなかなか結果が出なかったが、起用を推した指揮官は「糧とする、じゃなくて、勝て!」と、向こう気の強い東野に愛のムチを入れた。

 「キング・オブ・負けん気・東野峻」を熟知しているからこそ、原監督はその闘争心に着火した。帰京便を待つ福岡空港の出発ロビー。話題がその男に移った瞬間、背筋を張り、目をグッと開いて語った。

 原監督

 1軍のユニホームは似合うのかな?

 球場にロッカーは残っているのかな?

 彼の位置付けは、ローテの谷間に抜てきされた若手とは違う。登板を糧とする、じゃなくて、勝て!

 面白くないかな…。

 オチを付けたが笑っていない。「彼には大いに期待しているんだ」と続けた。

 04年ドラフト7巡目、茨城・鉾田からのし上がってきた東野。土俵に上げたのは原監督にほかならない。背番号「93」時代の08年9月には規格外の「中0日」で先発させプロ初完投。バットをへし折り、マウンドでほえる姿を「ファイト投法」と命名した。弱気の四球がのぞくと09年には「砂遊びは卒業しなきゃ」と突き放した。昨年は開幕投手→抑えという、最大絶対値の配置転換を指令した。今回も「負けたらどうなるか、分かってるよな」と、獅子の親子ばりに厳しい状況下で送り出し、はい上がらせる。

 当然、スタートから先発陣のど真ん中で暴れろと願っていた。だが2軍戦でもKOが続き、直接視察した5月15日も同じ内容。「いいところを探してみんなに言おうと思っていたけど、なかった」と断じた。開幕から2カ月が過ぎたタイミングでの登用&猛ゲキは、ためたマグマをぶつけてほしいから。「2軍での時間を、どう使ったか」と、“投げざま”をしかと見届ける。

 スタートでつまずきながらも、一気の反転で首位へ。交流戦初Vがクッキリ見える。原監督は「なぜ調子が上がったか、思うところはいくつかある。でも今、それは言わない。自分の宝物として、しまっておきたい。まだ51試合だから。ロッテ戦も考えていない。西武ですね」とぶれない。東野が屈強なレオたちをねじ伏せれば、監督の宝物がまた増える。【宮下敬至】