<日本ハム7-6ソフトバンク>◇8日◇帯広

 キターーーッ!

 日本ハムの4年目、杉谷拳士内野手(21)が総力戦となった8日ソフトバンク戦(帯広)で、6-6の9回2死一、二塁から値千金のサヨナラ二塁打を放った。チーム一の元気印は、お立ち台で「“キターーーッ”っていう感じですね」と声を弾ませた。若武者のプロ初となるサヨナラ打で、チームは地方開催試合で今季初勝利。今後に勢いのつく劇的勝利で首位をがっちりキープした。

 ベンチの期待を背負った代打杉谷が、小雨の中、打席へ向かう。「とにかく思い切っていこう。しっかりバットを振ろう」。ひと呼吸置き、マウンド上のソフトバンク森福をにらみつけた。2ボール1ストライクからのスライダーを、迷いなく振り抜いた。左中間を深々と破った打球に、ベンチが一斉に飛び出した。総力戦に終止符を打つ、値千金のサヨナラ二塁打。二塁付近で歓喜に沸く選手の中心で、主役は興奮を抑えられずにいた。

 「“キターーーッ”っていう感じですね。サヨナラ勝ちしかないと思っていた。ソフトバンクにはいつもやられていたので、勝ちたいと思って試合に臨みました」。お立ち台で、小雨なんて吹き飛ばすほどの明るい笑顔で、背番号61はまくし立てた。

 「人としても、プレースタイルも含めて格好いい」と尊敬する稲葉がこの日、通算1000打点を達成。勝って記念試合に花を添えたいというのが、ベンチの総意だった。「稲葉さんに『拳士は2000安打まで、あと何本だ』と聞かれたことがあって『あと1970本です!』と。少しでも近づけたらなって思います」。その稲葉が9回、犠打を決めてお膳立てしてくれたサヨナラ機だっただけに「打たないわけには、いかなかった。前進守備の外野と風向きを考えて、高めを振っていこうと思ったんですけど(打ったのは)低めでしたね」と気合で打った。

 代打策が当たった栗山監督も「よう打ちましたね。一流投手は、代打でなかなか打たせてもらえない。性格だったり、いろんなことを考えて起用した」と喜びを隠せない。報道陣に「明日は1面で、ど~んとお願いします」と深々礼をするお調子者のお祭り男が、ここ一番で大仕事をやってのけた。【中島宙恵】

 ◆杉谷拳士(すぎや・けんし)1991年(平3)2月4日、東京都生まれ。帝京では春夏3度甲子園出場。1年生の06年夏の準々決勝智弁和歌山戦で登板、打者1人に対し1球で敗戦投手に。08年ドラフト6位で日本ハム入団。父満さんは元プロボクサーで元WBAフェザー級世界1位。89年に世界戦を経験した。173センチ、74キロ。右投げ両打ち。今季推定年俸は720万円。