<楽天1-0日本ハム>◇16日◇Kスタ宮城

 どでかい仕事をやってのけた。楽天釜田佳直投手(18)が日本ハムを5安打に抑え、プロ初の完封で5勝目を挙げた。最速150キロの直球を軸に早いカウントから勝負。118球を投げきり、虎の子の1点を守った。12試合目での完封は、球団では田中と並ぶ高卒ルーキー最速タイ。高卒ルーキーの1-0完封勝利は、99年松坂(西武)以来の快挙だ。夏場の6連戦で救援陣を休ませ、首位相手にカード勝ち越しを決めた。

 釜田の初々しい笑顔がマウンド上ではじけた。9回2死、完封まであと1人。そこから連打を浴びて一、二塁とピンチを広げた。少し笑い、ブツブツとつぶやく。「力むな、力むな」。自分に言い聞かせ、最後は陽をスライダーで空振り三振に仕留めた。「9回投げきるのは大変だなと思いました。ここまで来たら腕を思い切り振って、後悔のないように投げました」と両手を突き上げて喜んだ。

 1回から省エネ投球だった。「早いうちに勝負できたのは良かった」とテンポ良く投げた。3球以内で打ち取ったのは27アウトのうち14個。6回1/3を2失点の前回登板では、犠打を除く17アウトのうち7個と半数以下だった。最速は150キロをマークし、力強さも戻った。「前回、前々回よりも全然良かった」と、別人のような投球内容だった。

 7回を投げきることがテーマだった。「野球が9回だと知らないんじゃないか」と星野監督に酷評されるほど、7回に崩れることが目立った。原因の1つが球数の多さ。球数を少なくするため「追い込んでからはこうしたらいいとか、教えてもらいました」とエース田中から助言を受けた。詳細は明かさなかったが、田中が「無駄な球はいらない」とするスタイルと同様に早めの勝負を仕掛けた。後半戦6試合は全て7回持たずに降板。6回1/3を投げた前回は113球で、この日は7回で86球。歴然の違いだった。

 佐藤投手コーチからは「追い込んでからの内角攻め」を説かれた。追い込まれるとストライクゾーンを外角に広げる打者心理を利用し、内角を有効に使うようアドバイスされた。4回、この日公式戦初対戦の中田を3球三振。3球目は内角高めの直球だった。

 これで8月は2戦2勝と夏に強い。金沢のエースで出場した昨夏甲子園の3回戦、1-2で習志野に負けたのが8月16日だった。あの日からちょうど1年。「こうして1軍で投げているとは思わなかった。甲子園で経験したことが今ここで出せたかなと思います」と満足そうに振り返った。

 高卒ルーキーの1-0での完封は99年の松坂以来で「一番うれしいのは1-0の完封です。自信になります」と素直に喜んだ。星野監督も「ピッチャー冥利(みょうり)に尽きる。たいしたもんだ。(ピンチでも)俺は代える気はなかった」と高く評価。誰もが手に汗握った、しびれる完封劇だった。【斎藤庸裕】

 ▼釜田がプロ初完封で5勝目。高卒新人の完封勝利は10年9月12日秋山(阪神)以来で、1-0完封は99年4月27日松坂(西武)がロッテ戦で記録して以来13年ぶり。ドラフト制後(66年以降)では66年森安(東映=2度)66年堀内(巨人=3度)89年川崎(ヤクルト)99年松坂に次いで5人目の高卒新人1-0完封となった。ドラフト制後5勝以上挙げた高卒新人は08年唐川(ロッテ)以来17人目だが、釜田はまだ1敗。5勝時に1敗以下は66年堀内0敗、67年江夏(阪神)1敗、86年遠山(阪神)1敗、08年唐川、12年釜田の5人だけ。