プロ野球界はかつてJリーグの誕生に危機感を覚え、改革を進めて現在の隆盛につなげた。いま、プロバスケットボール男子のBリーグが急速に台頭し、日本のプロスポーツシーンで存在感を高めつつある。プロ野球界にとって新たな「黒船」になるのか。23日から始まるBリーグのチャンピオンシップ(CS)ファイナル(決勝)を前に、3回にわたって考える。【取材・構成=沢田啓太郎】
昨年5月のBリーグ・チャンピオンシップ(CS)決勝第3戦。東地区を2連覇し、CSも勝ち上がってきた宇都宮ブレックスは追い込まれていた。
西地区覇者の琉球ゴールデンキングス相手に第4クオーター(Q)残り5分を切って、57-62で5点差。しかしここから粘り、残り33秒で日本代表の比江島慎が逆転の3点シュートを決める。そのまま逃げ切った劇的な幕切れに、1万3159人がつめかけた横浜アリーナが揺れた。
この試合を取材していた私は、日本シリーズ第7戦が逆転サヨナラホームランで決着したかのように興奮した。40年近くプロ野球を取材し、伝説の「10・8」(注)にも立ち会ったが、ここまでドキドキした経験はめったにない。
野球が好きならばきっとBリーグも好きになる。プロ野球などと並行し、およそ3年間Bリーグを取材して感じたことだ。私の意見だけでは心もとないので、プロ野球とBリーグを間近で見てきた「プロフェッショナル」の意見も聞いてみた。
DeNAのチーム付広報、上野友輔さん(41)はDeNA入社前にBリーグの秋田ノーザンハピネッツで約2年間、やはり広報として働いた。
「大いにあると思います。プロ野球以上のスピード感、選手たちのケタ外れのフィジカルの強さなどをコート際のかなり近くで見ることができます」
さらに、野球より短い時間(基本2時間、長くて2時間半)で終わるので、若年層を中心に好まれている点も指摘する。
Bリーグからサッカー、高校野球など幅広く実況をこなすフリーアナウンサーの篠田和之さん(55)は「基本的には全く別のスポーツ」と前置きしながら、類似点をあげてくれた。
「野球もバスケもゲームに流れがあります。どちらも点が入らない時はなかなか入らない。逆に言えば、1つのプレーで流れが変わります。誰にでも得点するチャンスがあるのは同じ。ともにアメリカ発祥のスポーツでスタッツ(数字)がたくさんあって、テクノロジーの発達でいろんなスタッツが増えているのも一緒ですね」
Bリーグの取材では試合のスタッツが終了後すぐに配られ、コーチ、選手たちがスコアカードをみながら会見に応じる。NPB、BリーグのHPにはチームや選手の数字が、これでもかというほど載っている。
上野さんは「推し」の文化にも親和性を感じるという。
「競技よりもまず選手から入っていくファンがともに多数存在すると思います。特にBリーグは野球以上に地域貢献活動に大変熱心で、そこからファンになっていただく方もいると思います」
宇都宮ブレックスでは、日本人最初のNBAプレーヤー田臥勇太(45)が地域の夏祭りに参加したり、街中で試合開催のビラを配ったりしていた。また、主力選手が地元のお年寄りや子供たちを訪ね、一緒に体操したりして健康増進や生きがいづくりに貢献している。
これらの取り組みは宇都宮だけではなく、秋田をはじめ、ほとんどのBクラブで行われている。プロ野球もうかうかとしていられない。Bリーグは新たな方針や仕組みを次々に打ち出し、日本のプロスポーツ界に大きなインパクトを与えている。その先導役、Bリーグの島田慎二チェアマン(55)を直撃した。(つづく)
(注)1994年のセ・リーグは129試合を消化して巨人と中日が69勝60敗と全くの同率に。最終130試合目(当時)は直接対決で、勝った方がリーグ優勝という大一番となった。ナゴヤ球場での一戦はテレビ平均視聴率48・8%(関東地区)をマーク。巨人が6-3で勝ち、長嶋監督が胴上げされた。
◆Bリーグ 05年にオールプロのbjリーグが誕生し、実業団中心のJBL(のちにNBLと改称)と2つのトップリーグが併存。国際連盟(FIBA)から問題視される中、日本サッカー協会最高顧問の川淵三郎氏らがリーグ統一に乗り出し、15年4月にジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ(JPBL)が設立され、同年9月にリーグの名称がBリーグと発表された。
16年9月22日、アルバルク東京対琉球ゴールデンキングス戦で開幕。当初は1部(B1)18、2部(B2)18チームで構成されていたが、現在はB1が26、B2が14で、別組織のB3を含めると全国で55チームある。今季で10シーズンが経過し、26年秋からは3つのカテゴリーに再編成される。
<Bリーグ1部・チャンピオンシップ決勝(全3戦、2戦先勝方式)>
長崎ヴェルカ(西地区1位)VS琉球ゴールデンキングス(ワイルドカード2位)
◆日時 第1戦・5月23日(午後2時30分)第2戦・24日(午後1時5分)第3戦・26日(午後7時5分)
◆会場 横浜アリーナ
◆放送 第1戦・日本テレビ系、NHK・BS 第2戦・NHK総合 第3戦・NHK・BS(いずれも中中継)
◆そのほか放送・配信 バスケットLIVE、プライムビデオ、U-NEXT、DAZNで全戦配信。JスポーツとJスポーツオンデマンド(一部録画放送・配信の可能性あり)







