<巨人2-4中日>◇29日◇盛岡

 奥の守道…中日が東北決戦で首位巨人を連倒し、5ゲーム差に縮めた。盛岡でも主役は4番トニ・ブランコ内野手(31)だ。左手の骨折で離脱していた主砲が、完全復活をアピールする2アーチで巨人を沈めた。復帰した前日と合わせて2発5打点。主砲復帰で連勝した手応えからか、高木守道監督(71)は「3戦目は負けてもいい」とうそぶく余裕を漂わせた。

 天高く舞い上がった打球が、万歳で迎える左翼竜党に吸い込まれた。3点リードを1点差まで迫られ、巨人ペースになりかけた8回。田原のスライダーを捉えた4番ブランコの一振りが、試合を決めた。3回にも江柄子からバックスクリーンへ2ランを放った。左手の骨折から復帰2戦目。新人粉砕の1試合2発で完全復活、そして首位巨人を連倒だ。

 「上がってきてすぐ、勝利に貢献できてうれしい。試合勘は少ないけど、2本ともうまく内からバットが出た。神様に感謝だよ」

 チームにとっては99年以来、13年ぶりの盛岡での試合。本来ならブランコは1カ月前に訪れるべき場所だった。球宴第3戦の舞台。選手間投票で出場が決まっていた主砲も「東北での開催だし、少しでも夢を与えたい」と楽しみにしていた。だが7月8日のヤクルト戦で左手に死球を受けて骨折。1カ月半の戦線離脱を余儀なくされた。「震災で大変だったと思うけどみなさんの声援が力になった」。2発には東北に届けるエールがこもっていた。

 高木監督も興奮を隠せなかった。「何と言ってもあの2本。あれがブランコ。待ちに待ったホームランですよ。でもこれだけ早々にやってくれるとは想像してなかった。でも彼は今、気持ちがすごく乗ってるんでね」。復帰した前日から、試合前の円陣で声出し係を務めている。叫んでいるのは、この一言だ。「大事なのは気持ち気持ち!

 ハートハート!」。監督は「外国人で珍しい。みんなを盛り上げてくれている」と感謝。大和魂を備える主砲は「負けられない戦いが続く。生きるか死ぬかでやってるから」と胸を張った。

 114試合を消化して首位と5差。数字上は、逆転連覇した昨年より1ゲーム差も首位に近い位置にいる。しかもブランコは昨年も同時期に故障から復帰し、大活躍してVの使者になった。すべてが追い風で、逆転3連覇も十分、現実味を帯びてきた。

 巨人にも3カード連続勝ち越し。東北決戦の秋田、盛岡を制し、今日郡山で3連勝、一気に4差まで迫る勢いだ。だが今回の首位攻防3連戦で「気楽に」を合言葉にする高木監督は、笑って言った。

 「願わくば2つ勝ちたいと思ってたけど2つ勝てた。だからもういいんじゃないですか」。えっ、3戦目は負け予告?

 連日の爆笑締めに、守道竜の勢いがある。【松井清員】