最愛の「人生の監督」との別れを惜しんだ。5日に子宮頸(けい)がんで亡くなったDeNA中畑清監督(58)の妻、仁美さん(享年59)の葬儀・告別式が10日、都内の青山葬儀所で営まれた。巨人長嶋茂雄終身名誉監督(76)や、楽天星野仙一監督(65)ら球界関係者だけでなく、俳優の西田敏行(65)ら約1800人が参列した。

 中畑監督は最愛の妻を感謝の言葉で送り出した。「かあちゃん!

 仁美!

 ありがとう!」。出棺前の最後のあいさつ。雲ひとつない青空の下、響き渡った力強い声。深々と頭を下げた後の顔は、止めどなく流れる涙でぬれていた。

 白、赤、ピンクのバラで埋め尽くされた祭壇。その中央で、仁美夫人は優しくほほ笑んでいた。遺影は、長男淳さんの子供の七五三の時のもの。家族で話し合って、この1枚に決めたという。「きれいだろ。俺が思った通りに作ってくれたよ」と、葬儀前に話した。

 夫人が亡くなった5日から、安らかに眠る表情を見守り続けた。自宅へ訪れる弔問客には1人1人お礼を伝え、時には明るく冗談を交え、気丈に振る舞った。「葬式をあげたくない気持ちもある。きれいな顔をして眠っているから、お棺に入れるのも嫌な感じがする」と漏らしたこともあった。それでも「けじめだから」と、この日を迎えた。

 ひつぎに花をささげる際、こらえてきた涙があふれ出た。夫人の顔にほおを寄せ、最後に真っ赤なバラを供えた。ユニホーム姿が一番好きだった最愛の人に誓ったのは、野球で恩返しすること。「野球人の中畑というところが大好きなかあちゃんだった。来年は『とうちゃん、頑張ったね』と言ってもらえるように、命懸けで頑張ってまいります」。

 葬儀所を後にする時、位牌(いはい)を胸にこうつぶやいた。「今日は2人にさせてくれ。悪いな…」。36年間連れ添った夫人への尽きぬ思い。大きな悲しみに暮れる中畑監督に、仁美さんはこう言うに違いない。「とうちゃん、頑張れ」と。【佐竹実】

 ▼主な参列者

 【DeNA関連】春田真(オーナー)池田純(球団社長)高田繁(GM)守安功(本社社長)高木豊、二宮至、友利結、三浦大輔、アレックス・ラミレス、森本稀哲、下園辰哉、金城龍彦、荒波翔、山口俊【巨人関連】長嶋茂雄(巨人終身名誉監督)桃井恒和(巨人球団社長)原沢敦(巨人GM)原辰徳(巨人監督)川相昌弘(巨人1軍ヘッドコーチ)小笠原道大【球界関連】加藤良三(コミッショナー)星野仙一(楽天監督)大久保博元(楽天2軍監督)衣笠剛(ヤクルト球団社長兼オーナー代行)小川淳司(ヤクルト監督)落合博満、篠塚和典(日刊スポーツ評論家)太田誠(駒大元監督)定岡正二、小早川毅彦、槙原寛己、江川卓【芸能関連】西田敏行、宅麻伸、柳葉敏郎、大友康平、山田雅人(敬称略)