WBC韓国代表の辞退者が6人に膨れ上がる異例の事態となっている。11月に予備登録28人を発表した後、主力級が相次いで離脱。今回は、メジャーリーガー秋信守外野手(30=レッズ)が新チームへの適応を理由に不参加が正式に決まった。韓国野球委員会(KBO)は27日に緊急会議を行い、新たに2選手の入れ替えを発表。今大会は活躍しても兵役免除がないため、チーム力とモチベーションの低下が懸念されている。

 韓国代表が大会前から苦しんでいる。主力選手の辞退者が続出し、既に6人が入れ替わった。国際舞台で日本を苦しめてきた奉重根、金広鉉といった左腕が肩痛を理由にメンバーから外れ、代わりに選ばれた1人が張元準投手(警察庁=昨季まで韓国ロッテに所属)。現在、兵役中の選手を招集しなければならないほど、メンバー選考に頭を抱えているのが現状だ。

 前回09年大会で代表監督を務め、現KBO技術委員長の金寅植氏は「今大会でベスト8入りはやさしい。日本は大リーガーが抜け、キューバも以前ほどではない。過去に比べて悪くない組み合わせで、優勝も狙える。ただ問題はチーム内にある。負傷選手が多く、代わりの選手を選んでもけががある。投手陣は過去最悪になるだろう」と地元紙中央日報の取材に答えた。

 辞退者続出の背景には、兵役問題がある。韓国の成人男性には約2年間、訓練の過酷さで知られる軍隊入りが義務づけられている。スポーツ選手には免除制度があり、野球は五輪銅メダル以上か、アジア大会金メダルが条件。06年の第1回WBCではベスト4進出が国民的に注目を集め、特例として免除が認められた。だが09年大会では準優勝したが適用されず、来年のWBCにも兵役免除はない。

 朝鮮日報は「これまでの選手選考では『なぜ選ぶんだ』ではなく、『なぜ選んでくれないんだ』という不満の方が多かった」と温度差を指摘。今回の辞退者は故障が主な理由だが、兵役免除が認められていたら、どんな痛みにもこらえて出場を志願するだろう。既に兵役免除の恩恵を受けた選手は、兵役義務を持つ仲間のために全力を尽くし、近年の国際大会で好成績を収めてきた。来年のWBCは“最大のモチベーション”を欠き、メンバー落ちで臨まざるをえない。