中日で薬物騒動が起きた。4番候補の新外国人、マット・クラーク内野手(26=パドレス3A)が沖縄・北谷キャンプ2日目の2日、持病により常用していた薬の成分に覚せい剤の一種アンフェタミンが含まれている可能性があったため沖縄県警沖縄署に出向き、尿と薬剤の簡易検査と事情聴取を受けた。陰性で違法な成分は検出されなかったが、科学捜査研究所(科捜研)で精密検査をする。クラークは今日3日から練習に復帰する。

 キャンプ初日に9本の柵越えを放った中日の新外国人クラークに、薬物騒動が持ち上がった。

 球団は1月31日の全体ミーティングで「アンチドーピングの手引書」を配布。これを見たクラーク本人が、日本に持ってきた「持病の薬」の成分ラベル表示に、禁止薬物のアンフェタミンが含まれていることに気づき、1日午前の練習後に球団に申告した。アンフェタミンは覚せい剤の一種。ドーピングどころか、日本では所持すら違法になる。球団はすぐ沖縄県警沖縄署に相談し、この日午前10時半に出頭した。

 クラーク、佐藤球団代表、近藤国際部長、藤田チーフトレーナー、加藤通訳の5人が1時間半の事情聴取を受けた。本人への尿検査と薬への簡易検査が課された結果、覚せい剤の「陽性反応は出なかった」と沖縄署関係者は説明。薬は押収された。尿とともに科捜研で精密検査を受けることになったが、あくまで治療薬としての使用で犯罪性はないと判断された。クラークはそのまま宿舎に戻り、この日の練習を休んだ。

 佐藤球団代表は「成分に書いてあるので正直(陽性が)出ると思っていた」と話した。高木監督も「ひとまずはホッとした」と胸をなで下ろした。アンフェタミンは通常、簡易検査でも検出される可能性が高いという。検出されなかったのは成分がごく微量だったためか、ラベルの記載ミスや処方間違いなのかは不明。球団が沖縄署に確認したところ、簡易検査の「シロ」の判定が、精密検査で「クロ」に覆る可能性はほとんどないという。正式な判定は精密検査待ちだが、警察は違法性はなしとの認識。球団はNPB(日本野球機構)にも事実関係を報告し、クラークは今日3日から練習に復帰する予定だ。

 佐藤代表によると、本人は6歳ごろからその薬を服用。朝と夜の1錠ずつで、米国の病院で処方された1カ月分を日本に持ち込み、最後の服用は1日の朝だったという。佐藤代表は「米国では合法なので、本人は日本でも問題なく買えると思っていたようです。もし(来日時の)税関で申告していれば、犯罪者扱いになっていたかもしれない。今はとてもショックを受け、ナーバスになっている」と話した。明日4日に琉球大医学部付属病院で検査を受け、代用薬を探すという。

 クラークは球団を通じ、「僕はドラゴンズでプレーして成功したいので、全部をクリアにしたい」とコメント。薬の扱いに関する日米の基準の相違が、大騒動に発展した。【松井清員】

 ◆マット・クラーク

 1986年12月10日、米カリフォルニア州生まれ。ルイジアナ州立大学から08年全米ドラフト12巡目指名でパドレス入団。昨季は同傘下3Aで121試合に出場で打率2割9分、22本塁打、77打点。メジャー経験なし。家族は夫人。趣味は釣り、テレビゲーム。血液型AB。年俸35万ドル(約3150万円)。196センチ、98キロ。右投げ左打ち。

 ◆NPBのドーピングに関する制裁

 ◇個人に対する制裁の基準となる種類は4つ。(1)けん責・始末書をとり将来の戒めとする(2)一定期間の出場資格停止(1試合以上10試合以下の公式試合の出場停止)(3)一定期間の出場資格停止(1年以下の公式試合の出場停止)(4)無期限の出場資格停止

 ◇その選手が所属する球団の関係者の関与が認められた場合は、その球団に対し1000万円以下の制裁金を科すことができる。