「聞きながら~」をやめて集中力アップだ。ヤクルト小川淳司監督(55)が沖縄・浦添キャンプの第2クール初日の7日、初めて主力投手が投げたフリー打撃の直前、球場内に流れていたBGMを止めた。プロ野球キャンプの打撃練習では、アップテンポな音楽が流れるのが一般的だが、集中力アップを狙って異例の策を講じた。大型補強はない中、12年ぶり優勝に向けて静かに燃えている。

 フリー打撃が始まると、浦添市民球場が静まりかえった。それまで流れていた場内のBGMは消えた。聞こえてきたのは、乾いた「カーン」という打球音と、時折上空を通る飛行機や、米軍の新型輸送機オスプレイの「ゴーッ」というごう音のみ。まだ第2クール初日ながら、これまでにないような緊張感が漂った。

 通常の打撃練習では、ノリの良い音楽が流れる。だが、このキャンプで初めて1軍投手が投げるフリー打撃が始まる直前、小川監督が関係者に「無音」にするように指示した。臨時打撃コーチを務める若松元監督からの提案もあったといい、「集中できないからね。勉強でも、そうでしょ?

 僕はそうだったんだけど『~ながら』だと集中できないと思う」と説明した。

 集中するために、もうひと工夫した。「2人投手が並んでいたら危ないし気も使う」(池山打撃コーチ)との理由で、球場内の本塁付近2カ所に置いていた打撃ケージを1カ所にした。2投手が並んで投げる方が効率は良いが、張り詰めた空気の中で、中沢、赤川、八木の先発候補との1対1の勝負を選んだ。小川監督は「音もなくて、みんなに見られていると緊張する。その中で力を発揮できるようにしないと」と意図を明かした。

 昨季はチームの打率、得点圏打率はトップでも、順位は3位。10連敗など、ここ一番で踏ん張れなかった。今季の12年ぶり優勝に向けて、勝負どころで結果を残せる「集中力」の強化は欠かせない。柵越えを放った飯原が「集中できました」と言えば、山田も「緊張感があって良かったです」。「変化」をキーワードの1つに掲げる小川監督は「野手陣がすごいなと思って。カンカン打ってるからね」と喜んだ。BGMなしの打撃練習で、静かに刀を研ぐ。【浜本卓也】

 ◆練習中のBGM

 球団を問わず、流行のヒット曲や懐メロなど、選手たちが気分よく練習に打ち込むためにかかることがほとんど。今キャンプのヤクルトは、球団が球場に渡した曲のほか、場内スタッフが用意した曲がかかっている。K-POPや洋楽が流れていることが多い。ちなみに、公式戦の試合前の打撃練習中は、常に音楽が流れている。