ソフトバンクのドラフト6位山中浩史投手(27=ホンダ熊本)が先発候補に浮上した。14日、宮崎キャンプの紅白戦で2回を打者6人で料理する完全投球。“球界最遅”を自称するアンダースローから最速は121キロ止まりでも、85キロのスローボールも交えた投球術で主軸を抑えた。秋山監督は中継ぎに限定しない起用を示唆した。

 本多が、今宮が、松中が、天を仰ぎ、首をひねる。なぜか120キロの球にバットが空を切る。18・44メートル先の小高い部分にいる山中だけは分かっていた。「的を絞らせないのがテーマ。投げていてしっくりきている部分はありました」。キャンプ初の紅白戦で個性を出し切っての6人斬りだった。

 6回に白組4番手で登場。侍ジャパン合流直前の1番本多をシンカーで二ゴロに打ち取ると、下から浮き上がる軌道で打者のタイミングを狂わせた。7回の松中は外角へ逃げる120キロ真っすぐで空振り三振。「軌道が読みにくい。(シート打撃を含め)あいつから2三振ですよ」。ロッテ渡辺や西武牧田らアンダースローを得意にする元3冠王が、同じ熊本県の後輩にひねられ苦笑いだった。

 自慢の「球界一遅いボール」はこの日も最速121キロ。それでもペーニャへの初球では「打ち気をそらそうと高谷さんがサインを出してくれた」と85キロのスローボールも投げ、緩急差はばっちり。

 「たまたま良かっただけです。まずは1軍定着。信頼を得ないと投げさせてもらえないですから」。真面目な性格がにじむ言葉とは裏腹に投げっぷりはたくましい限りだ。

 快投のおかげで走者を背負ったクイックモーションのテストはできず。「今後はセットポジションにしてどれだけ走られないかです」と次の課題は分かっている。降板後は、視察に訪れていた元ヤクルト高津臣吾氏(野球評論家)からシンカーの握りと投げ方を教わる貪欲な姿勢も見せた。

 地元の熊本・天草市から5時間かけて訪れた親戚10人に快投を見せ、首脳陣にも存在感を示した。それでも「プロは継続して結果を出さないと」と慢心のない山中に、秋山監督も「ピンポーン、その通りだよ」。さらに「準備はさせているからな」と、現時点で中継ぎだけでなく先発の可能性も示唆。潜行してきたサブマリンが開幕へ浮上しつつある。【押谷謙爾】

 ◆山中浩史(やまなか・ひろふみ)1985年(昭60)9月9日、熊本県生まれ。必由館2年で下手投げに転向。3年夏に甲子園出場。九州東海大からホンダ熊本へ。09年から3年連続で日本代表。175センチ、80キロ。右投げ右打ち。昨年12月、早希さん(24)と結婚したばかり。