「投・打」に加え「走」もすごかった。日本ハムのドラフト1位大谷翔平投手(18=花巻東)が17日、沖縄・国頭(くにがみ)村で行われた紅白戦で実戦デビューし、初打席初安打を含む4打数2安打とアピールした。次の塁を果敢に狙う抜け目のない走塁も披露し、首脳陣や他球団スコアラーは絶賛。“プロデビュー戦”で投打だけではない、野球センスの高さを証明した。

 「代打・大谷」のコールに、約1800人が詰め掛けた超満員のスタンドは沸いた。4回無死。背番号11が、左打席に入った。直球が続いた後の3球目。谷元の134キロカットボールを、三遊間に流した。「緊張はなかったです。しっかり自分のスイングができました。(最初に安打が出て)あとの打席もリラックスしてできました」と満足そうに振り返った。

 初打席初安打を含む2安打デビューの初実戦。打撃能力に加え、大谷が印象づけたのは、抜群の野球センスだった。5回の第2打席。1ボール1ストライクから、左腕斉藤の98キロカーブを、しっかりと待って右翼へと打ち返した。マスクをかぶっていた大野が「止まって、カーブが打てたのがすごい」と驚く技術力。だが、さらに非凡なセンスを披露したのはその後だ。右翼手鵜久森の捕球体勢が整っていないと判断すると、一塁を回ったところでさらに加速。悠々と二塁を陥れた。

 一塁走者だった4回にも、次打者ホフパワーの右前打で、1度もスピードを緩めることなく三塁に進んだ。渡辺打撃コーチは「オレは打撃コーチだけど、走塁がすごかった。賢いな。(試合を)任せられる」とべた褒め。楽天の山口スコアラーも「走塁にも力みがないし、プレー全体がやわらかい。球界を代表する選手になる素材ですよ」と、たたえた。

 大谷には普通のプレーだった。50メートル走6秒台前半という脚力に加え「高校時代、ああいう練習ばっかりやっていたので」と事もなげに言う。常に次の塁を狙う姿勢は、アマ時代から培われてきた。中学以来という内野守備も「しっかり足を動かして捕っている」(西2軍監督兼内野守備コーチ)と評価されるように、野球に関わるすべての要素が秀でている。

 試合前には、ブルペン入りして71球を投げ込んだ。カーブ、チェンジアップなどを低めに集め「今日はコントロールを意識しました。思ったよりもいい投球ができました」とニッコリ。西武福島スコアラーは「直球が上ずると、カーブで修正する。賢いですよ」と、こちらもセンスを絶賛した。走攻守、3拍子がどれも一級品。大谷は大忙しの1日を振り返り「今日はそんなに疲れてません。(ブルペン後)行程にも入ったし、試合にもいけたのでよかったです」。二刀流挑戦が、ますます楽しみになってきた。【本間翼】