半世紀以上の時を超え、聖地に返り咲いた。57年ぶりの出場を果たした横手(秋田)が敦賀気比(福井)に0-10で敗れ、初戦で散った。秋田大会を5試合4完投とけん引したエース佐藤宙斗(ひろと)投手(3年)が10失点を喫するも、7回2/3、161球を投げ10奪三振の粘投。打線も3回1死二塁、7回1死一、二塁など好機を作った。地元の希望と期待を背負い挑んだ旅は、初戦で幕を閉じた。
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苦境でも、笑顔は絶やさなかった。秋田大会で5試合4完投の絶対的エース佐藤宙が、5回までに9失点。それでも、ベンチでは「みんなで楽しんでいこう」の言葉が飛び交った。10点目を失った8回途中、佐藤周明投手(2年)にマウンドを託すまで161球、10奪三振の力投。背番号1に大観衆からは惜しみない拍手が送られた。「自分が足を引っ張ってしまったという悔しい思いと、みんながここまでついてきてくれたという感謝で…」。自然と涙がこぼれた。
甲子園出場を決めてから、さらに磨きをかけた打線は散発4安打。守備の乱れからの失点、本来の力が出せなかった。聖地初白星には届かず、主将の熊谷昌太内野手(3年)は、「応援に応えることができなくて申し訳ない…」と目を赤くした。だが「甲子園で全員で戦うことができた。試合を通じて楽しめたのは良かったと思います」と確かな充実感も残った。
57年ぶりの聖地切符をつかみ、地元・横手の希望となった。秋田からはアルプスを紫色に染めあげた大応援団が駆けつけ、吹奏楽部はOBも集い約100人で美爆音を奏でた。山信田善宣監督(49)は「本当に心強く、背中を押され感動しました」と感無量だった。
結果は完敗だった。それでも、57年ぶりに聖地の土を踏んだ歴史は変わらない。指揮官は「閉ざされた扉をこじ開けたという意味では、すごい学年だった。いままで思いの届かなかった先輩の分も背負って戦えたのは貴重な体験だった」。踏み出した一歩を糧に、歴史をつないでいく。【高橋香奈】
◆秋田県勢の2桁奪三振 横手・佐藤宙が10奪三振。秋田県勢の2桁奪三振は21年の風間球打(ノースアジア大明桜)が1回戦の帯広農戦で10個を奪って以来、5年ぶり。
∇戸沢蒼捕手(2年=9回代打で右前打)「『絶対に打ってやる』と打席に入りました。本当にヒット打てたのかと夢のような感覚。これからは3年生の思いも背負って頑張っていきたい」
∇三浦悠聖外野手(2年=1番で出場し初回に左前打。9回は最後の打者となり)「最初はフルスイングするといういつも通りができた。最後はつなごうとしたが悔しい。このままじゃ絶対に全国で勝てないとわかったので、この経験を生かしてチームを引っ張っていきたい」
∇佐藤周明投手(2年=救援で1回1/3を1安打無失点)「ずっとひろさん(佐藤宙)が苦しい中投げていたので、チームも落ち込んでいるときに自分なりに笑顔で思い切って腕を振りました。ひろさんを見習い、ひろさんを超えられるような投手になりたい」

