それでも突っ走る。ソフトバンク内川聖一外野手(30)が“傷”とともにリーダー修行のシーズンに突入する。今日29日の楽天戦(ヤフオクドーム)で開幕。内川は、WBC準決勝プエルトリコ戦の走塁ミスを忘れまいと胸に刻み、闘争モードへ入った。引退した元主将の小久保氏から後継者に指名されており、言動でチームを引っ張る覚悟だ。

 忘れたいはずの傷を自らグイグイえぐる。逃げない。闘う。言葉のすべてが内川の決意表明だった。

 「サインがどうこうでなく、ベンチの意図と違う動きになった自分がダメ。もっと注意深くいかないと」

 緊張感が高まる開幕前日にあらためて、WBCの走塁ミスと向き合った。

 「人のせいにして、言い訳をして逃げ道をつくるのはいけない。僕は、全部自分の責任にして成績が出るようになったので」

 練習後の駐車場。胸の奥をさらけ出した本音トークは10分間に及んだ。

 触れたくない思いもある。「心の中から笑える日がいつ来るのかな」とも言った。あえて胸に刻み込んだのはこの傷が、成長するための課題だから。そして気持ちをペナントレースへ完全スイッチさせるため。

 「忘れちゃいけないけど、また新しい1年が始まる。くよくよダラダラやるのは良くない。前に進まないと。元気な姿を待ってくれている人もいますしね」

 気構えと体も整った。腰の張りでオープン戦ラスト2試合を欠場したが、フリー打撃で力強い打球を飛ばした。練習後は患部を入念にケアし「薬はいりません」と不安を消した。

 WBCでは中日井端に次ぐ打率3割4分8厘。2次ラウンド台湾戦の8回にみせたつなぎの安打など、5年連続打率3割の技術で侍ジャパンを支えた事実は色あせない。前評判の高いソフトバンクでも不動の3番。開幕から日本一奪回まで、そのバットにかかる責任は大きい。引退した小久保氏から次期リーダーの候補に指名され内川に自覚の2文字が湧き始めている。

 「現時点では僕がリーダーとは思わない。何年かかるか分からないけど、周りから認めてもらい、自分からそんな気持ちが湧けば。小久保さんは『外様じゃない。みんながお前のことを見て、認めている。お前が外様と思っていたら失礼』と言って下さった。その思いは忘れず、気づいたことはどんどん言いますよ」

 横浜からFA移籍3年目。何も迷いはない。チームの先頭で走る。突っ走る。傷のある胸の奥底でしんしんと、強く、燃え上がる炎を内川本人が感じているはずだ。【押谷謙爾】