日本一奪回への戦いが幕を開ける。今日29日の楽天戦(ヤフオクドーム)で2013年シーズンが開幕。即戦力ルーキーがソフトバンクの日本一奪回のキーマンだ。ドラフト1位の東浜巨投手(22=亜大)は大学時代東都リーグ通算35勝、同リーグ歴代1位となる22完封を記録。勝ち方を知っている頭脳派が、公約通り「2桁勝利、新人王」へ白星を積み重ねていく。

 東浜は自分の調整法で開幕まで状態を上げてきた。新人合同自主トレやキャンプで周囲がどんなに飛ばしていても、遅れているように見えてもブレなかった。それだけ自分に自信があるからだ。

 東浜は「最低でも10勝はしたいですね。1つ1つ積み重ねていけば新人王も最多勝もついてくると思います」とはっきり口にする。自分の最大の持ち味を「総合力」と言う。最速152キロの直球は捨てた。140キロ超えの直球と変化球を内外角の低めに決める制球力で抑える。

 好きな言葉は「10安打完封」。社会人の日本生命で活躍した杉浦正則氏の言葉を沖縄尚学時代に比嘉監督から教わった。安打をいくら許しても得点を許さなければ負けないという意味だ。

 キャンプ、オープン戦を通じ東浜は「10安打完封」を実践している。低めに球を集めているから長打はない。走者が出ても東浜はクイックが1秒15と速い。投手は1秒2以内なら速いと言われている。永山スカウト部長が「東都大学リーグで鍛えられている。速くなければ(リーグ通算)35勝なんてできないですよ」と話すように、実戦力の高さこそ東浜が即戦力と言われる部分だ。

 変化球はスライダー、カーブ、鋭く小さく横に曲がるカットボールがある。一番得意なのがツーシームで、摂津のシンカーのように沈み、左打者の外角へ逃げていくような軌道を描く。キャンプでは投球フォームや腕の振りをズラし、打者のタイミングを外す幻惑投法も見せた。これからペナントレースで、相手が研究を重ねてくる中で、さらにいろんな技を見せてくれるはずだ。

 3月17日には、思い出の詰まった神宮でヤクルトとのオープン戦に登板。この日もツーシームがさえ、5回1失点と好投した。「大学とは雰囲気が違いましたね」と楽しげに振り返った。「長くプレーして子どもに愛される選手になりたい」。ピンチでも崩れない。いつの間にか勝っている。そんな楽しみな東浜のルーキーイヤーがもうすぐ開幕する。【石橋隆雄】