<阪神2-0巨人>◇9日◇甲子園

 ドントライク、1年たったらラブだよ~。ツンデレ美女のような心変わり?

 で阪神4番マット・マートン外野手(31)がエース能見篤史投手(33)と抱擁した。6回、均衡を破る宮国打ちV打。新4番のオーラに包まれ、固め打ちの3安打だ。無敗巨人を止めて、これで猛虎は甲子園開幕戦で7連勝。虎ファンみんなが「アイ・ラブ・マートン」と叫んだ。

 悩み抜いたマートンはもう、いない。お手本のようなセンター返しが、突っ走る巨人に急ブレーキを踏ませた。過去2年のように長打を狙い、大きく足を上げたりしない。大振りもしない。日本新記録のシーズン214安打を達成した10年によく見た、糸を引くような美しいライナーだった。

 マートン

 能見さんが6回までずっと抑えていた。なんとかしたかったんだ。

 能見と宮国の息詰まる投げ合いが続き、両チーム無得点の6回2死二塁。低め133キロ直球をライナーで中前にはじき返した。二塁走者大和が決勝のホームイン。今季開幕戦となる甲子園に、地鳴りのような大歓声が響き渡った。

 窮地で踏ん張る仲間を救えた喜びが、粋なひと言を生みだした。お立ち台で隣の能見から「ナイスバッティング!

 ありがとうございます」と感謝され、笑顔で片言の日本語を叫んだ。

 「ノウミサン、アイシテル~!」

 波紋を呼んだ「アイ

 ドント

 ライク

 ノウミサン」発言から約1年。もちろん冗談のつもりだったが真意は伝わらず、能見や仲間に迷惑をかけ自責の念にさいなまれた。そんな忘れたい過去をあえて引き合いに出したのには理由がある。

 マートン

 2人でお立ち台に上がると分かって、いいタイミングだったし、今日で(騒動を)終わらせられたらと思ったんだ。

 昨季は打率2割6分と「絶不調」。暴言騒動にコーチ造反騒動もあった。実は日本特有の強風にも苦労していた。「アメリカの球場は風が入らないように工夫されているけど、日本の球場は海抜が低くて影響を受けやすい。風の影響でボールが動くんだ」。悩み苦しみ失敗し、時には傷つきもして初心に戻った。通常より体重を4キロ落として来日し、打撃フォームも10年スタイルに戻した。そしてこの夜、つらすぎた12年へ、お立ち台から完全にサヨナラを告げた。

 4番に座って2戦目。コンパクトな打撃で開幕戦以来、8試合ぶりの猛打賞だ。開幕7連勝中の巨人を止めても、冷静さは失わない。「どんな試合も大事。明日もしっかり勝たないといけない」。13年のマートンは、心身ともにどっしり落ち着き払っている。【佐井陽介】