<阪神2-0巨人>◇9日◇甲子園
黄色と黒に染まったスタンドが揺れていた。「フ・ク・ド・メ!」「フ・ク・ド・メ!」。タテジマをまとって初めて甲子園での公式戦を戦った。虎の一員になった実感が阪神福留孝介外野手(35)の全身を駆けめぐっていた。
「頑張れという声援をいただきましたし、あらためてこの声援を味方として聞けるんだなと。いい球場だなと思いました」
開幕から全勝の王者を沈めた1打は6回だ。巨人宮国のスライダーを捉えた。打球は弾丸ライナーで右前に弾んだ。チームトップの7打点目。勝負強い5番打者が決定的な2点目をたたき出した。
伝統の一戦で甲子園デビュー。この特別な日に福留はグラウンドに一番乗りした。練習開始前、ただ1人で特打を行った。和田監督らが見守る中、約30分間バットを振った。「裏方さんにも協力してやってもらっている。その中で1本出て良かった」。わずかながら留飲を下げる1打だった。
甲子園で最後にプレーしたのは中日時代の07年7月15日、阪神戦。5回1死一、二塁、右翼福留は鳥谷の右前打を捕ると一塁走者を刺すために三塁へ送球-。この瞬間右肘が「飛んだ」。その後は代打で出場もしたが登録抹消、手術、そして、メジャー移籍。事実上、日本最後の試合だった。あれから2095日…。聖地の景色はまったく違ったものになっていた。
「巨人戦というより、このユニホームを着て、初めてこの球場でやれた。僕はどっちかというと、そっちの方が楽しかった」
G倒の快感よりも、甲子園でプレーした充実感が心を満たしていた。福留と、タテジマと、甲子園。新しいドラマの始まりだ。【鈴木忠平】



