<阪神4-0DeNA>◇14日◇甲子園

 甲子園では無敵!

 阪神のドラフト1位藤浪晋太郎投手(19=大阪桐蔭)がプロ初勝利を挙げた。プロ2度目の先発で、本拠地甲子園に初登板。最速152キロ速球を軸に、DeNA打線を6回5安打無失点で三塁も踏ませなかった。今季の高卒新人では一番乗りの勝利。大阪桐蔭のエースで春夏連覇した“聖地”では10連勝となった。

 慣れ親しんだ甲子園が藤浪に力をもたらした。唯一といえるピンチは5回。2死から高城に四球、投手三浦に左前打を許し一、二塁。「自分で作ってしまったピンチ。しっかり切り抜けようと思いました」。1番石川に148キロの直球で力勝負を挑み、左飛に打ち取って勝ち投手の権利を得た。凜(りん)とした表情を崩さない19歳と2日の新人が、初の“聖地”で大歓声を浴びた。

 藤浪

 素直にうれしいです。本拠地の甲子園で初勝利できたので、すごくうれしいです。

 大阪桐蔭時代は9戦9勝の甲子園で、力強く92球を投げた。1回、3番モーガンを150キロで二ゴロに仕留めた。2回、4番ブランコとの対戦では全4球が直球勝負で一邪飛。続く5番ラミレスは直球1球で仕留めた。最速152キロの直球だったが「いまひとつ走っていなかった。調子は良くなかったんですが、悪いなりにまとめることができた」。そんな中、強力外国人トリオを力でねじ伏せた。三塁すら踏ませないほぼ完ぺきな内容。「鳥肌が立つような応援でした。360度応援なので、すごく投げやすかったです」と、ベンチ裏で余韻に浸った。

 2月の沖縄・宜野座キャンプ中のことだった。宿舎でスマートフォンの動画を見ながら「このときのフォームが一番良かった」と打ち明けた。甲子園で春夏連覇を成し遂げた3年夏決勝戦の映像だった。ダルビッシュや前田健らのフォームも研究しているが、3年間かけ築き上げた理想型が、甲子園で輝いた自分だった。聖地で力を発揮できたのは当然か。和田監督は「甲子園のマウンドが合うんだろうね。怖いもの知らずだけど、今はそれでいい」とほめた。

 初勝利に向けて試行錯誤を重ねた。中継ぎ登板した7日の広島戦では三盗を許した。セットポジションからの投球を修正し、グラブで手で覆う形にして走者からボールが見えないようにした。課題だった制球も1四球と乱れなかった。5回1死一、三塁の打席では一塁線にスクイズを決めた。「勝てる投手」としての本領を発揮した。

 プロ初勝利は通過点にすぎない。「納得できない部分がある」と貪欲で「もっといい投球ができると思う」。お立ち台から満員に近い観衆に向かって「1試合1試合、任せてもらった試合でチームの勝ちに貢献したい」と言い切った。