<広島0-4阪神>◇7日◇マツダスタジアム
マエケンに投げ勝った。阪神ドラフト1位藤浪晋太郎投手(19)が、42日ぶりの5勝目を挙げた。あこがれの広島エース前田健太投手(25)と堂々と渡り合い、6回を3安打無失点。降雨中断に水を差されたが、6回0/3を1失点のマエケンに投げ勝つ形で、5月26日の日本ハム戦以来の白星をつかんだ。昨年、春夏甲子園を制した右腕が夏の到来とともに復活した。
新人の境遇など関係なかった。藤浪は意地でグッと耐える。1点を先制した直後の6回。2死から菊池に二塁打され、丸に四球を与えた。中西投手コーチがマウンドに向かいひと呼吸置く。4番エルドレッドに球を低めに集めて追い込むと、最後はカットボールで一邪飛に抑えた。
藤浪
余計な力を抜くことを考えて投げていました。しばらく自分のピッチングをできず、悔しい思いをしたことも多かった。今日は自分のピッチングができ、勝ち星もつけてもらって良かった。
6回を終え92球で、続投の予定だった。だが、7回表に雨のため1時間2分に及ぶ中断があったため降板となった。試合開始も雨で30分遅れるなど、天候の影響を受けながら42日ぶりの勝利を手にした。
もがき苦しんだ。5月26日の日本ハム戦以降、勝利と縁遠かった。6月は4戦2敗で防御率6・05。復調のキーワードは「脱力」だった。序盤から、ゆったりした投球を徹底し、グラブを左膝に当てるような動作を繰り返した。中西投手コーチは「力みがあった。足を上げたところで脱力するように言った」と説明。技巧派の代表格、巨人杉内の映像をチェックし、試行錯誤した。
「相手チームのエースだし、簡単に点をやれば負けてしまう」
力を抜くのは、投球モーションだけではない。球界を代表するエース前田健との初対決に、はやる気持ちを抑えていた。和田監督には「マエケンとの勝負じゃないぞ。勝負するのは広島打線。1回1回、しっかり投げろ」と諭された。あこがれの存在と対等に渡り合った。高校進学の際はPL学園も候補に挙げた。「前田さんは勝てる投手ですから」。理想の先輩の母校というのが理由だった。大阪桐蔭に進学したが、同じ大阪出身の本格派右腕として6歳差の先輩に刺激を受けていた。
打席でも前田健の投球技術を体感した。「真っすぐは速いし、一級品のスライダーだった。一流の投手は、そういう球を持っている。勉強になりました」。10年の交流戦では前田健が日本ハム・ダルビッシュに打席であらゆる球種を示された。この日は藤浪が初めて前田健の胸を借りる。エースは大エースの背中を見て育つ。
「ちょっと焦りもあった。自分の中の弱い部分も出た。苦しい時期だった。きょうは自分なりにいいピッチングをできた」
胸のつかえも取れた1カ月ぶりの白星。苦境を乗り越え、あこがれも乗り越えたルーキーが、また大きくなった。【酒井俊作】



