<オリックス0-3日本ハム>◇25日◇京セラドーム大阪

 長いトンネルを、ようやく抜けた。昨季リーグMVPの日本ハム吉川光夫投手(25)が、7回2/3を4安打無失点と、久々の快投。自身の連敗を6で止め、約2カ月ぶりの7勝目を手にするとともに、チームを5連勝(1分け挟む)に導いた。チームは借金を1まで減らし、あす27日から、本拠地で0・5ゲーム差となった4位西武と3連戦。エース格の左腕に輝きが戻り、上位浮上への準備は整った。

 1年前をほうふつとさせる存在感で、背番号34がマウンドに仁王立ちした。7回2/3を4安打無失点、9三振を奪う快投で、6月28日西武戦(札幌ドーム)以来となる7勝目を手にした日本ハム吉川は「これだけ負けている僕を、信用して、信頼してマウンドへ送り出してくれた監督に感謝したいです」と、静かに言葉を紡いだ。8回2死一、二塁、安達に2球を投げたところで左足をつって無念の途中降板となったが、昨季MVP左腕の復活劇に栗山監督も「久しぶりに吉川らしかった」と感じ入った。

 窮地を脱したストレートが、勝利への礎となった。1回、四球と安打で1死一、二塁のピンチを招いたが、4番李大浩を見逃し三振に仕留めた。フルカウントから、内角低めいっぱいに決まった142キロ。この1球で息を吹き返した左腕は、続く高橋信をオール直球で3球三振に切り、2回以降は右打者の外に沈むチェンジアップを有効に使って相手打線を封じ込めた。

 長く先の見えない連敗は、くしくもこの日と同じオリックス戦から始まった。7月5日から、まさかの6連敗。昨季リーグトップの防御率1・71を誇った左腕も、この日の試合を迎えるまでは8月の月間防御率8点台と、もがき苦しんだ。

 不器用な性格ゆえに、スランプ脱出も容易ではなかった。前日24日も球場フェンスに壁当てし、投球フォームを入念に確認。ただし、人目に付かないように、こっそりと。そんな姿を遠くから見ていた島崎投手コーチは「悩んでいる姿を人には見せたくないんでしょ。今も、僕らが見ていないと思って(壁当てを)やっているはず」と苦笑い。中嶋バッテリーコーチから捕手目線でのアドバイスを受けるなどして、復活への道筋を模索した。

 8回のピンチでは、今季初めてマウンドへ駆け寄った栗山監督から励まされた。「『ベンチも含めてみんなお前を信じているから、しっかり腕を振ってこい』と言われました」。58日ぶりの白星にも、笑顔はなし。「チームに迷惑をかけたぶん、これからどれだけ取り返していけるかが大事」。感謝を込めて、残り試合もがむしゃらに腕を振るつもりだ。【中島宙恵】