プロ野球記録の55本塁打にあと3本と迫るヤクルトのウラディミール・バレンティン外野手(29)が2日、飛行機で富山入りした。搭乗便は偶然にも、3日から対戦する巨人ナインと一緒。いつもなら相手チームの外国人選手に陽気に話しかけるが、この日はおちゃらけムードを封印。闘争心を内に秘め、3日先発の巨人内海哲也投手(31)には真っ向勝負を懇願した。

 誰かのボディーガード?

 185センチ、100キロの巨体にブラックスーツ、サングラスも装着したバレンティンは、近よりがたい強烈なオーラを放っていた。羽田空港で飛行機に乗り込むと、待っていたのはエコノミー席。ヤクルトのチームメートが陣取る後列付近で、体を小さくして座る姿がほほえましかった。

 普段は陽気な性格だが、移動時の口数は少なかった。飛行機は富山、福井の北陸シリーズで対戦する巨人と同便。巨人の選手は機内中央付近に座っていたため、話す機会もなかった。これまで52本塁打を放ち日本記録までマジック3。勝負を避けられる打席が増え、ストレスがたまらないはずはない。巨人戦への意気込みに、真剣勝負を願う気持ちが凝縮されていた。

 バレンティン

 内海投手とも、巨人の投手とも勝負したい。勝負してくれれば、チームのためにいい結果を出す自信がある。勝負する、しないは、自分ではコントロールできない。

 今季、左投手との対戦打率は4割3分1厘。全28安打中17本をスタンドに運んでいる。だが3日先発の内海に対しては9打数1安打、0本塁打、3四球。抑えられているからこそ、やりがいがある。力と力をぶつけ合うガチンコ勝負に飢えている。試合前日の移動からなれ合いをよしとしなかったのも、真剣勝負を求めるがゆえかもしれない。

 移動時の服装は半袖シャツ姿が大半のなか、小川監督は「スーツ、珍しいな」と主砲に声をかけた。答えは富山空港に着いて明らかになった。30度以上あった東京と比べて10度以上気温が低く、肌寒い。記録挑戦には、これからの体調管理も重要になる。何物にも染まらず、信じる道をいく。黒いスーツに、無言の決意をこめた。【柴田猛夫】