超人ハルクだ!

 阪神のドラフト3位指名、東農大・陽川尚将内野手(22=金光大阪)は、鉄人よりすごい?

 超人伝説を持つ男だった。試合中の守備で左肩を脱臼してもプレーを続け、自分で応急措置をして何とホームランまで打っていた。東都大学2部リーグでも4年間、グラウンドに立ち続けた陽川は、プロでも「フルイニング出場」を目標に掲げた。

 痛みに強く、ケガにもめげない。虎のドラ3陽川は左肩を脱臼したにもかかわらず試合に出続け、直後の打席でホームラン-。鉄人、いや超人のようにタフな男だった。

 9月10日、東都2部の秋季リーグ戦だった。国士舘大戦で5回の守備中に三遊間に飛び込んだ。「あっ、しまった」。飛び込んだ瞬間、左肩が脱臼したのを感じた。「痛すぎて下を向いていた。チームメートの誰かが左手を支えていてくれていたら、はまりました」。

 東農大・福地日出雄監督が交代を告げようとした瞬間、左肩が治った。直後の6回、打席に立つ前にバットを振ってみた。思ったほど左肩に痛みを感じない。いける-。「アドレナリンですかね。無心でいけました」と、本塁打をたたき込んだ。

 福地監督は陽川を「ケガに強いというよりか、痛みに強い選手」と言い表した。この一戦に、陽川の体の強さが表れている。「次の日に試合がなくって良かったです。肩が上がらなかったので」と笑いながら振り返るが、次の週も4番三塁で先発出場。もちろん最後までプレーした。

 フルイニング出場にこだわるのは、小学校時代に右肘の剥離骨折で半年間以上、野球ができなくなったことが大きく関わっている。当時、投手もしていた陽川は、試合前の投球練習でケガを負ってしまった。「何もできなくて、野球はいいかなと正直思いました。でも半年後に野球をやったら、楽しくてしょうがなかったんです」。離れていたから分かる野球の楽しさを感じた。ずっと試合に出続けたい気持ちは大きい。

 陽川の強さは体だけではない。「ドラフトに大きく関わってくる4年の春に、打率で結果を残した。心の成長を感じた。気持ちが強い」と福地監督は話す。4年の春季リーグでは、4割5分の驚異の打率を残した。全ては練習のたまものだった。常に練習の手を抜かない。1年春の途中からレギュラーを取っても、上級生に上がっても、取り組む姿勢は変わらなかった。

 4年間、コンスタントに打ち続け105安打。今季パ・リーグ首位打者のソフトバンク長谷川の専大時代(103安打)を超えた。本塁打も23本放ち、主軸として勝負強さも発揮してきた。

 「(プロに)入ったからには実力を見せたい。ホームランはもちろんですが、打率を残したい。主軸を打って出続けたいです」

 4年間培った心と体の強さも武器。プロでも「フルイニング出場」の鉄人記録が目標だ。【宮崎えり子】<陽川尚将(ようかわ・なおまさ)アラカルト>

 ◆生まれ

 1991年(平3)7月17日、大阪市。

 ◆球歴

 転校した小学校で仲良くなった友人の誘いで、2年から「関目東ライオンズ」で三塁手として野球を始める。菫(すみれ)中では「大阪都島」で投手兼三塁手。金光大阪では1年夏に背番号15でベンチ入りし、2年春から正遊撃手。

 ◆実績

 東農大で東都2部リーグ通算105安打、23本塁打。遠投110メートル、50メートル6秒1。

 ◆転機

 金光大阪3年時、巨人から育成3位の指名を受けたが断る。「悔しい気持ちが大きかった。もしあれがなかったらここまで野球を続けられなかったかも。感謝している」。

 ◆お祝いメール

 ドラフト後に来た150通のメールを1通ずつ2日間かけて返信。

 ◆阪神ファン

 幼いころから虎党。憧れだった選手は今岡誠。

 ◆趣味

 DVD鑑賞。ホラーやアクションの映画をチームメートと見ることが癒やし。

 

 ◆サイズ

 179センチ、86キロ。右投げ右打ち。