掛布DCが「小バース」を見つけた。阪神の秋季安芸キャンプで3日、掛布雅之GM付育成&打撃コーディネーター(DC=58)は森田一成内野手(24)を密着指導。特打129スイングで27本の柵越えをマークした森田に「小バースだな」と史上最強助っ人を意識して命名した。11年に「小ブラゼル」と呼ばれた逸材がスケールアップ。掛布DCからは「一塁レギュラー奪取」指令も飛び出した。

 曇天の安芸に、明るい光が差し込んだ。特打メニューで面白いように打球をオーバーフェンスさせていた森田が、最後のひと振りにフルパワーを込めた。白球は高々と中堅上空を舞う。まだ伸びる。まだ落ちない。「場外か!」。周囲も息をのんだ弾道は、バックスクリーンと同じ高さのネット最上部を揺らした。

 あと30センチで場外弾。未完の大砲の充実を象徴する一撃だ。合計129スイングで27発の柵越え。掛布DCも思わずうなった。

 「小バースだな!

 ブラゼルよりバースがいいだろ」

 誇張ではない。チーム屈指の飛距離を誇る怪力の持ち主だ。球団史上最多の通算349本塁打を誇った掛布DCが目を細めて「『小ブラゼル』よりいいだろう。森田もバースがいいですって…。日本人であれだけ遠くに飛ばせるのは魅力がある」と褒めた。

 掛布DCが85年の日本一でともにクリーンアップを組んだ伝説の助っ人・バースの名前を思わず出すほど、安芸の森田は好打を連発している。

 「分かりやすく教えていただいている。数多く打たせてもらっていますから」。掛布DCが合流した前日2日の特打では足をつるほどの猛練習。この日も力強いスイングを繰り返した。11年7月26日中日戦でプロ初打席初本塁打の鮮烈デビュー。以来、同僚助っ人になぞらえて「小ブラゼル」と称されたが、さらに迫力ある称号を手にした。

 伸び悩んだプロ6年間だった。今季も13試合出場でノーアーチ。もどかしい思いは、猛特訓で振り払う。掛布DCも「下半身の使い方が変わってきた。甲子園の左打者が20、30本を打てば脅威。非常に可能性を感じる」と評した。一塁レギュラーの可能性も「新しい外国人がどれだけやれるか未知数。仮に外国人がケガしても、彼のような打者がいれば」と否定しないほど。長距離砲の秘訣(ひけつ)も伝えた。

 「左肩を下げず、レベルに肩を回す感じで、芝生まで打球を飛ばしなさい。ボールを土につけるな!」。ミスタータイガースの奥義は、森田が歩むべき王道だった。【酒井俊作】

 ◆掛布とバース

 バースが入団した83年から88年までの6年間ともにプレー。85年4月17日巨人戦(甲子園)では3番バース、4番掛布の連続本塁打に5番岡田も続き「バックスクリーン3連発」を達成。球団史上初の日本一に貢献した。85年に16回、通算38回のアベック弾をマーク。88年に掛布が引退、バースはシーズン途中で退団し、同じ年に2人はユニホームを脱いだ。

 ◆森田一成(もりた・いっせい)1989年(平元)8月4日、岡山県生まれ。岡山・関西では2年春夏、3年春に甲子園出場。07年高校生ドラフト3巡目。今季は1軍で13試合に出場し19打数4安打。2軍では16本塁打69打点でウエスタン・リーグ2冠。185センチ、96キロ。右投げ左打ち。