広島から国内フリーエージェント(FA)宣言した大竹寛投手(30)が25日、広島市のマツダスタジアムで巨人への移籍を表明した。この日、獲得に乗り出していたソフトバンクと楽天に断りの連絡を入れ、松田元オーナーを訪れて伝えた。埼玉県出身の右腕は地元の関東地区でのプレーを希望。背番号は広島時代と同じ17。

 「野球小僧」のまま飛び込んでこい!

 巨人原辰徳監督(55)はこの日、巨人入りを表明した大竹にメッセージを送った。都内で行われた納会・選手会ゴルフのラウンド後に吉報を受けた原監督は上気していた。「野球に取り組む姿勢、ひたむきさ。まさに野球少年。野球選手の原点である姿。ナインに対しても大きな影響を与えてくれる。歓迎します」と言った。カープでもまれた本格派の加入は、単なるローテ投手の補強にとどまらないと踏んでいる。競争はもちろん野球に取り組む姿勢。チーム全体への相乗効果まで期待した。

 敵ながらあっぱれと認めていた。06年3月8日、22歳の大竹が寒風吹く倉敷で巨人相手に力投。FA交渉時には電話越しに直接伝え、心を揺さぶった。「当時のブラウン監督に『大きく育てたいピッチャーがいるんだ』と言われた。春のオープン戦で大変寒い中、150キロのボールを投げ込む姿。素晴らしい選手だな、と思うと同時に尊敬した。新しい記憶ですね」と、色あせないままの印象を明かした。

 歳月を経て磨かれた原石を、「脱皮した」と原監督は表現した。「パワーピッチャー、プラスして、インサイドワークに変化球。積み重ねて、今の大竹を作り上げた」と、カープの屋台骨を支えてきた右腕を見ていた。「実力至上主義に変わりはない」とした上で「本人、私を含め、先発の一角を担う役割を期待している」と強い言葉を続けた。

 来月上旬にも契約を結ぶ予定。「アスリートに到達点はない。大きな目標に向かって手助けする」と原監督。悩む時間は終わった。大竹らしく大海原に飛び込んでくるのを待つ。【宮下敬至】