アマチュア担当の和田美保記者(34)が、「期間限定」でプロ野球担当に転身。2日、西武ドラフト1位の森友哉捕手(18=大阪桐蔭)が参加する高知・春野で行われているB班キャンプに潜入した。初めてのプロ野球キャンプ取材。“甲子園のアイドル”だったドラ1がいるキャンプ地だけに、華やかな現場を想像していた和田記者だったが、現実は真逆。森の今と本音に迫った。

 A班キャンプ地である宮崎・南郷から約420キロ離れた高知・春野。その名の通り春を感じさせる気候で、到着した1月31日の午後は17・8度まで気温が上がった。着てきたダウンコートを捨てたい衝動をグッと我慢しながら、初めてのプロ野球キャンプ取材が始まった。

 前日1日のキャンプ初日。午前7時半からの「朝の散歩」に同行後、同9時半から本球場での練習が開始した。20年前に巨人原(現監督)の大ファンだったこともあり、宮崎キャンプに行ったことを思い出した。長嶋監督時代。入団2年目の松井もいて、それこそ人をかきわけながら必死にサインをもらった。1軍と2軍の違いはあるとはいえ、今回もプロ野球キャンプ。ファンが殺到する風景を想像し、わくわくしながら球場へ移動した。

 “人だかりの夢”ははかなく散った。人はまばら。土曜日だったので少年野球の子どもたちがスタンドに20人ほどいたが、あとはポツ、ポツ…。最終的に400人まで入ったが、スタンドは寂しい限り。静かすぎる環境の中、注目の森が投手の球を受けるためブルペンに向かった。今年からサブグラウンドに新設されたが、銀板で固められた外観はいまだ工事中のような雰囲気。見られることを想定していないような造りだが、森に聞くと「まだ下手くそなんで、個人的には閉めてもらった方がありがたいです。練習に集中させてもらっています」と意外とも思える答えが返ってきた。

 2日目の報道陣はたった7人。同じくドラフト1位の楽天松井裕樹投手(18=桐光学園)がいる久米島には120人が押し寄せたというのに、だ。阪神藤浪とともに甲子園を沸かせたスーパールーキーにとって、この環境はちょっと物足りないのではないかと思ったが、またもや考えは違った。「人数は気にしていません。ここは人目を気にせず自分自身との戦いができる場所です。松井は自分より先に1軍で試合に出ると思いますが、それをバネに、自分にとっていい刺激になります」と笑った。今はとにかく自分と向き合うことに専念している。

 終始ひっそりとしている春野だが、森を待つファンはいる。初日はサインができないほど疲れきっていたが、2日目はきちんと応じた。「今は焦る気持ちはないです。でも、決してのんびりではありません。じっくり、です」。南郷ではフリー打撃を行わず、土台、基礎作りから始めている。遠く離れた春野のルーキーにも、その意思はしっかり受け継がれている。【和田美保】

 ◆森友哉(もり・ともや)1995年(平7)8月8日生まれ、大阪・堺市出身。大阪桐蔭では4季連続で甲子園に出場し、通算14試合で打率4割7分3厘、11打点。左打者として歴代最多の5本塁打をマークした。また2年時から18UW杯の高校日本代表入り。昨秋は代表主将を務め準優勝に導いた。高校通算41本塁打。50メートル走6秒2。遠投100メートル。170センチ、80キロ。右投げ左打ち。推定年俸1300万円。