「ひげよ、さらば」とは言わせない。来日が遅れていた楽天の新外国人ケビン・ユーキリス内野手(34=ヤンキース)が8日、キャンプ地の沖縄・久米島入りし、チームに合流した。メジャー通算150本塁打の大砲は、楽天で禁止されているヒゲが特例として認められた。ただし、安打を打てなければ剃(そ)ることを自ら宣言。大物助っ人は、トレードマークを懸けてプレーする。

 意外な発奮材料になるかもしれない。久米島野球場での入団会見に現れたユーキリスは、立派なヒゲを蓄えていた。両耳からあごへのライン、さらに口を囲むように丁寧に切りそろえていた。「チームが許す限り生やしたい。T字にしたり、いろいろアレンジも考えたい」と笑みをたたえた。周囲を驚かせたのは、この後だ。「ヒットを打てなかったら剃ります」と大まじめに宣言した。

 ユーキリスにとって、ヒゲは代名詞とも言える。ヒゲが禁止されているヤンキースに所属した13年をのぞき、ボリューム感たっぷりに生やしてきた。そのヤ軍からFAとなり、晴れてヒゲを生やせる、と思いきや、楽天もヤ軍と同じでご法度だった。実は、三木谷オーナーから特別に認められた。「きれいに整えるのが条件なんだ。もっと長かったけど、短くしたよ」と配慮に感謝した。

 ヒゲでやる気になってくれるなら、お安いもの。星野監督からも「やってもらわんと困る」と、退団したマギー(現マーリンズ)の後釜として期待を寄せられた。その期待に応えるかのように、ユーキリスも「できるだけ先発で出て活躍したい」と抱負を語った。

 合流初日となったこの日は早速、体を動かした。前夜に那覇に到着したばかりだったが、時差ボケも関係なし。始発便で久米島入りすると、キャッチボールやティー打撃で汗を流した。昨年6月に手術を受けた腰の状態を不安視する声にも、「体幹を鍛えている。体と相談して活躍するよ」と言い切った。

 3月上旬には家族が来日する。日本行きを決めたのは、妻ジュリーさんの後押しが大きかった。知っている日本語を問われると「ドウイタシマシテ、アリガトウ、オハヨウ、サヨウナラ」とスラスラ。さらに、英語で「ドント・タッチ・マイ・ムスタシュ」と続けた。意味は「俺のヒゲに触るな」だが、英語圏の人には「どういたしまして」という日本語に聞こえるせりふとして有名だ。ヒゲの話題にユーモアたっぷりに切り返した。帽子を取ると、つるっとした地肌が見える。「上の毛がない分、ヒゲを生やします」と、ニヤリと笑った。【古川真弥】