中日谷繁元信監督(43)が20日、初代兼任捕手のノムさんから、成功への2つの金言を授かった。沖縄・北谷キャンプを訪れた野村克也氏(78=野球評論家)と会談。南海時代、70年から8年間兼任を務めた体験を踏まえ、自身が出場している際の救援投手の準備のさせ方と、参謀となるヘッドコーチの重要性を説かれた。

 谷繁監督はピンと背筋を伸ばしていた。野村氏が「新監督にあいさつに来ました」とキャンプ地を訪問。自身が生まれた70年から8年間、南海で初代兼任捕手を務めた先輩との新旧会談が実現した。「ヘボ監督だから助言なんておこがましい。でもプレーイングマネジャーの先輩だから、先輩面して生意気なことを言ってきました」。だが青年監督はそんな野村節にありがたく聞き入った。そして2つ、兼任成功への金言を授かった。

 (1)守備時

 「リリーフを用意させる時、マウンドにいる投手に分からないように準備させないといけない。投手はプライドが高い。配慮しないといけない」。試合中、自身が受けている投手がそろそろ代え時と感じた時、ベンチにサインを送る必要が出てくる。だがそのしぐさが目立てば、マウンド上の投手も察知し、動揺を与え、さらに制球を乱す可能性もある。自身はポーカーフェースで我慢。投手には解読不能な暗号サインを用意すべしとのススメだ。

 (2)攻撃時

 「兼任は守るより攻める方が困る。だからヘッドコーチがしっかりしないと。助監督のようなものだ」。打席に立ちながら采配し、1人で次々と作戦を考えるのは至難の業。そこで重要になるのが参謀の存在だ。野村氏は「私に考える野球を教えてくれた恩人」と言うドン・ブレイザー氏と8年間タッグを組み、リーグ優勝を含む6度のAクラスを達成した。「落合GMが森繁和の尻をたたいて、お前がしっかりしろと言ってもらわないとダメだ」。谷繁監督にとって、森ヘッドは16歳も年上のため、落合GMにハッパをかけてもらえとの進言だ。

 谷繁監督は「ありがとうございます。頑張ります」と誓いを新たにした。選手としても、野村氏の日本最多3017試合出場にあと117と迫る。「それは自然と追い抜いて破るでしょう」とエールを送るノムさんを笑顔で見送った。恩返しは、ノムさんも果たせなかった兼任日本一だ。【松井清員】