<オープン戦:オリックス2-3日本ハム>◇9日◇姫路

 即戦力ルーキーが「スーパーサブ」に急浮上した。日本ハムのドラフト2位浦野博司投手(24=セガサミー)が新人離れの安定感を見せ、猛アピールした。オリックス戦でオープン戦初登板。3回1安打無失点、3奪三振と好投し、2軍からの招集で結果を出した。今季、先発ローテーションの谷間を埋める“ジョーカー”の可能性を秘めるインパクトを残し、逆転での開幕1軍の望みが出てきた。

 浦野の表情は、ピクリとも動かなかった。2回2死一塁。四球を与えた直後だった。直球で押し切り、最後は決め球フォークで空振り三振に切った。「緊張したんですけど、自分の球は投げられたかな」。1回が終わった瞬間、緊張とはおさらばした。3回まで一気に駆け抜け1安打無失点。最速145キロをマークし、3奪三振と存在感を見せた。「自分の球を放る。それしか考えなかったです」。オープン戦初先発の大抜てきにも物おじせず、自分らしさを貫いた。

 ライバルが刺激になった。試合前、社会人時代のチームメートで先輩、今季プロ入りしたオリックス大山と再会。「お互い頑張っていこうと話しました。自分も負けないように頑張りたい」。ともに競い合ってきた旧友の存在に、改めて活躍への決意を強くした。栗山監督は「(社会人チームで)修羅場をくぐっているだけあって自分らしい投球をしていた」と評価。積み上げてきた経験が生きた。

 今どき珍しい堅実主義だ。春季キャンプ中のプロ初実戦の2月16日紅白戦。その本番当日も冷静にルーティンを守った。朝食は白米にみそ汁、サラダにスクランブルエッグが定番メニュー。「勝負デザート」のヨーグルトで締めて気合を入れている。浦野は「ヨーグルトは『必』です」とパワーの源にしている。この日も浮足立つことなく、今ある力を出すことに集中した。「テンポも自分の通りに持っていけた」。周りに流されない特長のマイペースさを、この日のマウンドでも発揮した。

 逆転での開幕1軍の可能性が、少なからず出てきた。今季は先発、中継ぎとも大混戦。即戦力として期待に応えた右腕に厚沢投手コーチは「十分、1軍ローテで投げられる」と絶賛した。当初は今登板後、2軍に再合流する予定だったが好投を受け急きょ、1軍残留が決定。完璧なオープン戦デビューで、昨季は手薄だった先発陣の秘密兵器になり得る力を見せた。浦野は「やっとプロ野球の舞台に立てた。まだまだ勝負はこれからです」。飛躍の可能性を秘めるルーキーが、頼もしくなってきた。【田中彩友美】<浦野博司(うらの・ひろし)アラカルト>

 ◆生まれ

 1989年(平元)7月22日、静岡県出身。実家はお茶農家。

 ◆球歴

 袋井市の笠原スポーツ少年団に小学3年で入団し、野球を始めた。浜松工-愛知学院大-セガサミー。高校時代は甲子園出場なし。昨年10月の東アジア大会(中国・天津)では優勝した日本代表の一員として、決勝の韓国戦の先発を任された。

 ◆入団

 ドラフト2位指名。契約金8000万円、年俸940万円(金額は推定)。背番号17。

 ◆スタイル

 最速151キロの直球と多彩な変化球が持ち味。細身の体ながらバランスの良い、躍動感のある投球フォーム。

 ◆目標

 あこがれの投手を問われ、レッドソックス上原、日本ハム武田勝の名前を挙げたことがある。

 ◆サイズ

 178センチ、70キロ。右投げ右打ち。

 ▼日本ハムの新人状況

 昨秋のドラフトで8選手が入団したが、オープン戦に出場したのは浦野とドラフト3位岡大海内野手のみ。岡はこの日、2試合ぶりの先発出場で決勝の押し出し四球を選び1打点。オープン戦通算5試合で、1本塁打を含む18打数7安打2打点と開幕1軍へアピールを続けている。