<オープン戦:ソフトバンク4-2巨人>◇15日◇ヤフオクドーム

 巨人菅野智之投手(24)が開幕投手へ、進化の投球を披露した。15日のソフトバンク戦(ヤフオクドーム)に先発し、6回を5安打1失点の好投。昨年6月の対戦で初完封を逃した因縁の相手、柳田にあえて力勝負を挑み、最速149キロの直球などでねじ伏せた。3種類のフォークを自在に駆使し、開幕投手の大役が決定的な28日阪神戦(東京ドーム)へ、成長を証明した。

 菅野が柳田に対し、リミッターを外した。2回1死の2球目。外角高めへ抜けた球だったが、笑みがこぼれた。内川、李大浩らに145キロ止まりだった直球を一気に149キロまで跳ね上げた。昨年、初完封勝利まであと1人という場面で、中前打を献上した相手に「力勝負で負けた相手に、去年とは違っているというところを見せたかった」。潜在能力が高い打者を前に、勝負を楽しんでいた。だからこそ、自然と腕の振りは速くなっていた。

 最後は懐をえぐるスライダーでバットを折った。内野安打になったが、勝負に勝った。2打席目の4回も140キロ台後半の直球を投げ続けた。「打撃練習を見ていても、他の選手と振りが違う。あえて力での勝負をしたかった」。締めは外角へ逃げる133キロの高速フォークで空振り三振。1年間の成長を見せつけた。

 フォークも進化していた。カウントを稼ぐタイプ、下に落ちるもの、カットボール気味の変化。3種類を打者心理を読み、繊細な指使いで投げ分けた。

 菅野

 (打者が)打席に入った雰囲気を感じながら、指のかかり具合を変えてフォークは投げ分けています。その意味で、狙ったところで三振がとれたのが良かった。特に初回の内川さんの三振ですね。

 好打者を圧倒した。中指への力の比重を大きくし、カット気味の軌道を作り出した。カウント1-2。外角へ逃げるフォークにバットは回らない。それでも続けた。より外角へ逃げる“カットフォーク”で明らかなボール球を振らせた。

 柳田の三振のように人さし指へ比重をかければ、外への回転を作るフォークと、逆もしかりだ。この日、積み上げた7個の三振のうち、4個はフォーク。「うまく使い分けることが出来たし、この間の時(8日オリックス戦)よりも良かった」と納得した。

 失点も想定内だ。2点リードの4回。自らの失策も絡み、無死一、三塁でも「阿部さんとも、1点はいいからと話した。狙い通り」とカットで併殺。状況に応じて、最善の策を投じた。

 開幕投手は決定的だが、原監督は「まだ決めていない」と明言しなかった。だが菅野は、はるか先を見据えている。シーズン開幕に向けた完成度を聞かれ「まだ20%。今100%だったら意味がない。これからも野球人生はある」。着実に大役への階段を上っている。【栗田尚樹】

 ◆菅野対柳田

 13年6月15日の交流戦(ヤフオクドーム)で菅野は先発投手、柳田は7番中堅でスタメン出場。菅野は9回2死まで6安打無失点と好投。プロ初完封を目前としながら、柳田に中前適時打を浴びた。試合は次打者を打ち取り、6-1で巨人が勝利。菅野はルーキー一番乗りでプロ初完投勝利を挙げたが、柳田には7回にも二塁打を許していた。