<中日6-0広島>◇30日◇ナゴヤドーム

 中日谷繁元信兼任監督(43)が、「選手谷繁」外しで初勝利をつかんだ。開幕連敗発進を踏まえ、自身より松井雅人捕手(26)の状態が上と判断して初のスタメン落ちを決断。広島相手に、その松井雅が勝負を決める2点二塁打や好リードの大活躍だ。オープン戦も含めてナゴヤドーム10戦目での初白星に「味わったことのない勝ちです」と笑った。

 谷繁兼任監督は松井雅からもらったウイニングボールを誇らしげに掲げた。80年以来34年ぶりの開幕3連敗を免れ、やっとつかんだ初勝利。「そらもう勝ったのは単純にうれしいです。ボールは飾ります」。生みの苦しみを味わった分、ホッとした笑顔がはじけた。だが心の中は少々複雑だった。監督谷繁が選手谷繁を外しての白星だったからだ。

 「喜びが爆発するほどでもない。しみじみとした勝利というか、味わったことのない勝ちですね。これは僕にしか分からないです」

 この日のスタメンに監督は自分の名前を書かなかった。「決めたのは練習前ですね」。2試合で1安打3三振1併殺。前日は自ら“オレに代打小笠原”を告げた自身と、松井雅の状態を冷静に分析。連敗で負けられないチーム状況も踏まえ、決断を下した。開幕3連戦で先発を外れるのは、4年ぶりだった。

 「長いシーズンを考えると、こういうこともやっていかないと。チームとしてやっているわけですから」

 指揮官の執念はナインに伝わった。3回は荒木が三塁側へボテボテのゴロで、一塁に頭から飛び込み先制打(記録は投安)とした。7回には代役松井雅が勝負を決める2点二塁打を放つなど2安打で、0封リレーもアシストした。試合前の円陣では“控え”の選手谷繁が、今年初の声出し係に立候補。8回の代打オレは不発に終わったが、「心は熱く頭は冷静に」のゲキから12安打で6-0の完勝が生まれた。

 「みんな硬さが取れて足も動き始めた。バッテリーでつかんだ勝利。(松井雅に)文句のつけるところあります?

 (兼任は難しくても)やんなきゃいけない」。二刀流の難しさを実感した試合。選手と監督の思いを交錯させ、苦笑も交えて余韻に浸った。もちろん次回こそ先発で真の兼任1勝をつかみたい。【松井清員】