<ロッテ7-8阪神>◇12日◇QVCマリン

 ルーズベルト・ゲームの虎や!

 阪神が2度のビハインドをはね返し、8-7での逆転勝利だ。8回に代打新井良太内野手(30)が逆転の3点適時二塁打。負ければ貯金消滅の大ピンチで、殴り合いの刺激的な一戦を制した。今季2度のルーズベルト・ゲームの勝者はいずれも阪神。猛虎の底力で、2位広島に0・5ゲーム差に迫った。

 迷いなく振り抜いた。2点を追う8回2死満塁、新井良は出番を告げられた。左腕松永との対決。その初球。142キロ速球をセンター右へ。スペシャリスト岡田が俊足を飛ばす。白球は1度、グラブに入ったが着地の衝撃でこぼれ落ちた。走者一掃の逆転適時二塁打。「岡田くん、守備がいいので『マジ、落としてくれ!』と思っていました」。執念が乗り移ったかのような打球だった。

 5回に逆転したのもつかの間、7回に必勝を期した安藤が逆転されて暗転した。その直後の再逆転打。ルーズベルト・ゲームとなった試合は、まさに壮絶な殴り合いだった。初回に先手を取られたが、4番ゴメスの1発で1度目の逆転。負ければ貯金が底をつくという崖っぷちで、新井良が千金一打だ。あまりにもドラマチックな試合展開だが、殊勲の男は6月はベンチが“定位置”。なんとこれが、今月9打席目。今季、今成と2人で争うはずだったホットコーナーには今、兄の貴浩がいる。開幕前、兄は「もし、俺が三塁で出たら、良太がな…」と複雑な心境を吐露していたが、勝負の世界の宿命は皮肉にも現実となった。

 だが、良太は兄の憂鬱(ゆううつ)をさわやかに吹き飛ばす。今成に開幕三塁を奪われてもライバルが打てば、拍手を送り、ベンチで声をからした。首脳陣からは「もっと競争心を…」と苦言が出たほど。そんな人間性を持つ良太だが、他人をうらやましいと思ったことはあるのか?

 との問いに、少し考えこんだ後、きっぱりと言った。

 「う~ん…。ないですね!

 あの人、すごいなと思ったことはありますけど、うらやましいと思ったことは1度もありません」

 数日前から右翼の守備練習をしている。首脳陣によれば、自主的な動きだという。三塁には兄がいる。今成は打撃好調だ。現状で自分が何をすべきか。「ねたみ」「ひがみ」というマイナス思考と無縁だからこその即断だった。

 「自分に力がないから今はベンチスタートですが、出たところで結果を出せるよう準備したい」。いくつかの思いは胸にあるはず。それでも、グラウンドで表現するのは限りなきポジティブ思考-。それは控えから三塁へと返り咲いた兄と重なる。熱く流れる“新井家の血”がそうさせるのか。猛虎の負の流れを変える一打だった。【鈴木忠平】

 ◆ルーズベルト・ゲーム

 米大統領ルーズベルトが「野球で一番おもしろいのは8-7だ」と言ったことに由来し、点を取られたら取り返して8-7で決着する試合のことをいう。池井戸潤氏による小説のタイトル(ルーズヴェルト・ゲーム)にもなっており、同作は4月からTBS系でドラマ化されている。阪神は4月20日ヤクルト戦以来、今季2度目の8-7勝利。

 ▼「ルーズベルト・ゲーム」ともいわれるスコア8-7の試合は阪神が、4月20日ヤクルト戦で記録して以来、今季2度目と、いずれも阪神が勝利を飾っている。交流戦では通算12度目になる。阪神の8-7勝利は27度目。なお宿命のライバル巨人との球団史上初対戦となった36年7月15日(八事山本球場)では、阪神が8-7で勝利しており、これが球団創設初のルーズベルト・ゲームだった。