<阪神2-10中日>◇29日◇甲子園

 10点大勝でいよいよAクラス入りだ。中日が1回に打者13人の猛攻で8得点。主役はプロ7年目で初猛打賞を4安打で飾った谷哲也内野手(29)だ。6年間で通算5安打の男が、鳴門工(現鳴門渦潮)時代に沸かせた甲子園でサイクル安打目前の輝き。先発浜田も愛工大名電時代に沸かせた甲子園の1軍初登板で無傷の4勝目。聖地の申し子たちが3位浮上を導いた。

 勝ちは初回の8点で決まっていた。9回、最終打席へ向かう谷に和田が言った。「狙っていけ!

 人生変わるぞ!」。本塁打でサイクル安打。コンパクトな打撃が信条の谷は左翼席の声援も受け、珍しいフルスイングで応えた。少々力んで三塁フライ。だが、甲子園初のお立ち台は充実感でいっぱいだった。

 谷

 詰まりました。ホームランは絶対に出ないけど気持ちは狙っていました。

 22日ロッテ戦でプロ初打点をマークした28歳の遅咲きが、虎党にもその名を刻んだ。離脱中の荒木に代わり、2番二塁でプロ初の3連戦連続スタメン。初回無死一塁でバスターエンドランを成功させる左前打で好機を広げた。谷繁兼任監督が「一発で決めて流れがきた」とたたえた一撃が、初回8得点の導火線。この回2巡目も左前打。その後も適時三塁打、二塁打とプロ初猛打賞を4安打で飾り、10点大勝を導いた。

 谷

 もう自分の仕事をするだけ。使ってもらってるので必死な姿を見せたい。

 昨季まで6年間で5安打0打点。オフが来るたび、戦力外通告の呼び出し電話におびえた。「今年こそダメならクビ」。悲壮な決意で迎えた2月、第1子の長男を授かった。「この子が大きくなるまで野球選手でいたいです」。芽生えた欲が全身を突き動かし、早出の鬼と化した。唯一、ミルクをあげ、おしめを替える時間が「お父さんとしての癒やしの時間」。パパは頑張った。

 甲子園は鳴門工時代に3度出場して活躍した思い出の地だった。2年春は決勝で報徳学園に敗れたが遊撃で準Vに貢献。3年春はエースとして桐蔭学園を完封した。「今日は楽しかったです」。表情には自信も宿ってきた。

 谷の奮闘でチームは借金を完済し、ついに3位に浮上した。指揮官は「そこを目標にしているわけじゃないし、上に2チームある」と不動。谷も「これからも1戦1戦集中です」と引き締めた。【松井清員】

 ◆谷哲也(たに・てつや)1985年(昭60)7月9日、徳島生まれ。鳴門工-日立製作所を経て07年大学・社会人ドラフト3巡目で中日入団。昨季は開幕直前に左足を骨折するなどチャンスを生かせず、昨季まで6年で通算30試合出場の5安打にとどまる。今季推定年俸770万円。180センチ、78キロ。右投げ右打ち。