<楽天1-2日本ハム>◇9日◇コボスタ宮城

 日本ハム大谷翔平投手(20)が圧巻の奪三振ショーだ。6者連続を含め、2試合連続の2桁で、球団記録に並ぶ自己最多16三振を奪った。球場計測は最速159キロだったが、視察したヤンキース育成担当特別補佐のトレイ・ヒルマン氏(51)のスピードガンで100マイル(約161キロ)が5度。降雨中断を挟みながら、自身2度目の完投で8勝目を挙げた。

 腹の底から、うめいた。大谷が入魂の叫びを重ねた。何度も、何度も大声を上げる。最高のラストを、力ずくで仕上げた。9回2死でボウカー。カウント2-2からの5球目、158キロでねじ伏せにいった。ファウル。仕留め損ね、豪快に右腕からウイニングショットを放った。外角高めへこの日最速タイ159キロ。空振りで16個目の三振。球団記録に並んだ。プロ2度目の完投勝利で初の無四球。自己最多の奪三振ショーで、完璧に締めた。弱冠20歳で秘めた投手としての美学に、また真価があふれた。

 大谷

 三振は付いてくるものなので。無四球でいけたことが良かった。

 驚異の数字も刻んでいた。この日は159キロが2球と、自身最速の1キロ差に肉薄。そのコボスタ宮城のスピードガン表示ではない舞台裏で、振り切っていた。ネット裏からヤ軍ヒルマン氏は7回まで視察。同氏の手動での計測では100マイル(約161キロ)が5球あったという。参考記録ながら自己最速。さらに99マイル(約159キロ)も7球、確認できたという。日米で数々の有望選手を見てきた眼で、こう論評した。日本が生んだ世界の右腕、2人の名前を出した。

 ヒルマン氏

 タイプが同じで比較対象にするならばダルビッシュだろう。緩いカーブ、高速スライダーを投げ分ける。(2年目では大谷が)むしろ勝っているといえる。タナカの場合は制球力がつくまで時間がかかった。

 高卒新人から手塩にかけ育成したダルビッシュ。楽天での成長過程を知るヤ軍田中をモデルに、現時点での大谷の力量を認めた。

 賛辞の嵐が吹く、内容満点だった。5回1死二塁での松井稼からの6者連続三振を含め「K」を山積み。ピンチで迎えギアを上げるなど、絶妙なペース配分。三振の内訳は16個中15個が空振り。直球にフォーク、スライダーと自在の決め球で、バットへのコンタクトさえ許さなかった。3回の登板前に17分間の降雨での中断の水入りもはねのけ、完全に支配した。

 成人してから初登板で初勝利の8勝目。強い自覚を明かした。「自分で責任を取らないといけない。野球も、生活もそう」。二刀流に挑むことを許される「大谷翔平」の存在意義を、これからも誇示していく。【高山通史】

 ▼大谷が毎回の16奪三振で8勝目。1試合16奪三振以上は11年8月27日田中(楽天=18個)以来18人、20度目で、16個以上で毎回奪三振は同じく田中以来8人目だ。大谷の20歳0カ月は68年8月8日江夏(阪神)の20歳2カ月を抜き16奪三振以上の最年少記録となった。これで今季の奪三振は111個となり、金子(オリックス)の132個に次ぎリーグ2位に浮上。5月終了時点では金子102個、大谷49個だったが、6月以降は金子の30個に対し大谷は62個と倍以上。6月以降は6試合で2ケタ奪三振が4度あり、この間の奪三振率が13・18。6月25日DeNA戦の7回からは17イニング連続奪三振と、ハイペースで金子を追い掛ける。

 ▼16奪三振は過去、東映時代の58年5月31日西鉄戦で土橋正幸、80年9月2日近鉄戦で木田勇の2人。なお、日本ハム在籍時のダルビッシュは11年に自己最多15奪三振を3度マークしている。