<日本ハム3-1西武>◇16日◇旭川

 日本ハム大谷翔平投手(20)が150キロ連発で前半戦を締めくくった。5回を3安打無失点6奪三振、リーグ2位タイの9勝目を挙げた。4四球と制球に苦しみながらも、150キロ後半の直球を連発する気迫の投球で要所を抑えた。前半戦を終え、わずか1敗と安定感の増した2年目右腕が、明日18日からの「2014マツダオールスターゲーム」(7月18日西武ドーム、同19日甲子園)に乗り込む。

 魅惑のポテンシャル全開で一区切りをつけた。突出したウイニングショットで前半戦最後の1球を締めた。5回2死二塁。中村にロックオンした。カウント1-2からの4球目。156キロの高め直球で空振りを誘った。しばらく、ねじ伏せた日本最高峰のスラッガーに、視線を送った。余韻を楽しむような不敵さも見せ、6回以降を中継ぎ陣へ託した。「常に中軸に力を入れるようにしている」。自在にギアを変えるクレバーさもシンクロさせ、圧倒した。

 底上げされた地力を証明した。全93球。「パ・リーグTV」の計測では158キロを筆頭に直球55球のうち50球が150キロ以上をマークした。「体調は良くなかった」が、築いた絶対的な強さを見せた。旭川スタルヒン球場の表示では最速159キロもたたき出した。最速160キロを4戦連続で記録するなど、急激に進化を遂げている今季。コンスタントに150キロ超が当たり前のシーンになった。6月11日巨人戦では驚きの1球も披露。ロペスを敬遠。その初球が145キロとチームメートの度肝を抜き、逸話もつくった。

 忍耐強く、異能の挑戦を結実させる光を見いだした。秘めた野望は、投手で登板前日以外の二刀流フル出場。肉体的負担による故障防止のため、栗山監督らは適度に「休養日」を設けてきた。大谷の本音は高校球児のように常にグラウンドに立つことだけにジレンマもある。象徴が、前カードのソフトバンク3連戦。2戦目から2戦連続で左翼で先発出場。本来はDH起用が理想だがチーム事情で、外野の中で送球の負担が最少のポジションを選択。設定された出場の条件は、投手への影響を加味して全力での送球禁止の厳命が出て、順守した。野球選手の本能を時に制御して試練を打破し、自分を磨いてきた。

 覚醒の兆しをつかんだ。花巻東3年時の進路。1度は決めたメジャー挑戦を断念し、日本を選んだ。その時の「パイオニアになりたい」の誓いを支えにし、プロ2年目で実証しつつある。自身の連勝を7に伸ばし、リーグ2位タイの9勝目。あのレンジャーズ・ダルビッシュも高卒2年目の前半戦終了時点では6勝だった。「疲れはそんなになかった」とさらりと言った。破竹の勢いを持続して球宴、そして後半戦へと突入する。大谷が夢見る二刀流の成功。否定的だった野球ファンも今、同じ夢を見始めた。【高山通史】

 ▼大谷が7連勝で9勝目を挙げた。大谷は昨年3勝0敗で、敗戦投手は今年の4月27日ロッテ戦の1度しかなく、プロ通算では12勝1敗。2リーグ制後、デビューから1敗以下で通算12勝に到達は、50年荒巻(毎日=1敗)55年円子(南海=1敗)56年稲尾(西鉄=1敗)66年堀内(巨人=0敗)73~74年小川(巨人=1敗)に次いで6人目。パ・リーグでは、8連勝→●→4連勝の稲尾以来、58年ぶりだ。