<楽天3-7日本ハム>◇27日◇コボスタ宮城

 足を止めた。日本ハム中田翔内野手(25)は歓喜に沸くベンチを見た。下唇を突き出しドヤ顔を向けた。バットを突き上げ応え、一塁へ走り出した。逆転された直後の7回2死一、二塁。左翼ポール際へ17号3ラン。一振りで再逆転へ導いた。「すごく良かった」。星が輝く夜空を見つめ、余韻に浸った。

 頼もしい背中を追いかけた。逆転劇の舞台になった7回。「お兄ちゃん」と呼ぶ稲葉が今季初安打で突破口を開いた。代走を送られベンチへ戻ってくる姿を、両手を上げて迎えた。不振が続いていた4月下旬、2軍にいた稲葉に「打撃がヤバイです」と相談して助言を受けたことがあった。後輩たちにとっては強い兄貴分として存在する中田だが、稲葉には弱音を口にできた。だからこそ、この日は燃えるものがあった。

 「稲葉さんの安打で、一気に1点取るぞという気持ちになった」。25日の同戦ではプロ7年目で初の満塁弾で勝利を呼び込んだ。一振りで流れを変える。困った時に助けてくれた「お兄ちゃん」に、頼れる主砲の仕事を見せることができた。

 楽天の先発則本は「因縁」の相手でもあった。4月の対戦で2打席連続で死球を受けた。「2つ目やぞ」と歩み寄り一触即発なムードを漂わせていた。本塁打を放った4打席目は初球から2球連続で内角高めの直球。あおられるような球にも動じなかった。「力ある球をほうっているので、しっかり狙いを定めていかないと」。冷静に見定めていた「内角直球」を的中させた。

 栗山監督は「選手が救ってくれた」と賛辞を送った。その中心に、中田がいた。昨季、ともに本塁打王争いをしたアブレイユも続いた。昨年8月20日の楽天戦以来のアベック弾。「この流れで(次カードの)千葉でも暴れたい」。真夏の熱気に負けないくらい、存在感が増してきた。【田中彩友美】

 ▼中田が逆転の17号3ラン。今季の逆転本塁打は4月3日ソフトバンク戦、5月3日オリックス戦、6月27日楽天戦、7月25日楽天戦に次いで5本目。他に、先制が5本、勝ち越しが1本あり、肩書付きの殊勲本塁打はリーグ最多の11本。両リーグを通じても丸(広島)と並んで最も多い。中田の年度別の殊勲本塁打数は09年0本→10年3本→11年8本→12年11本→13年→11本→14年11本と、早くも12、13年に並ぶ自身最多本数となった。