<巨人5-1阪神>◇13日◇東京ドーム

 重い敗戦の中、伊藤隼太外野手(25)の活躍が虎に光を呼び込んだ。存在をアピールするには1球で十分だった。

 「ああいう展開だったので、どんどんストライクを取ってくるな、と。それを逆手にとって、どんどんいこうと思った」

 始まりは4点リードされた3回だった。巨人小山の初球を右前に運び、チーム初安打をマーク。5回も初球を狙った。1死一塁で右前安打。得点に結びつかなかったものの、チャンスを拡大した。守備でも6回、頭上を越えた打球を素早く処理し、二塁にストライク送球。村田をタッチアウトにした。前日12日には中堅を争う俊介が本塁打。この日は一転「隼太デー」となった。チーム唯一のマルチ安打に好守備と、首脳陣へのアピールに成功だ。

 サプライズの刺激も大きかった。午後3時過ぎに会場入りすると、慶大時代の監督だった江藤省三氏(72)がグラウンドにいた。隼太は恩師の来場を知らず、思わぬ形で今年1月以来の再会を果たした。「成長を見せたかったのでうれしい」。そのまま試合観戦した江藤氏の前で生き生きとグラウンドを駆け回った。

 江藤氏には過去2年との違いを見せたかった。今春には発奮材料にする意図もあり、虎風荘を退寮した。新しい住まいでの生活が始まると、ダンベル、バランスボールなどを完備した「トレーニング部屋」を作った。「バットもそこで振れるので。休日も部屋でトレーニングしている」。集団生活から離れ、より自分のペースでトレーニングができるようになった。リラックス効果もあるだろう。試合前練習を見守った江藤氏も「(過去2年と比べ)少しプロ野球に慣れたのか、練習も楽しそうにやっているね」と好調要因を分析した。心の余裕が打率3割4分8厘につながっている。

 「チームうんぬんよりも、自分のことで精いっぱい。自分のことができた結果チームにプラスになれば」

 あくまでも見つめるのは自分だ。故障中の大和は今月末にも1軍復帰の可能性がでてきた。チャンスは多くない。それでも無我夢中でバットを振ることしか考えない。【松本航】