<DeNA4-7阪神>◇15日◇横浜

 アックスボンバー!

 切り込み隊長上本博紀内野手(28)が目覚めて、阪神が3連敗を免れた。東京ドームで当たりの止まっていた1番打者が、8回2死満塁の勝負どころで走者一掃の決勝二塁打。3回にも得点を呼ぶ二塁打とマルチ長打の活躍だ。さあ耳に手を添えて、上本の雄たけびを聞こう。イッチバーン!

 自らのバットで暗雲を振り払った。4点差を追いつかれた後。8回2死満塁で上本が国吉の速球に食らいついた。打球は中堅フェンスを直撃した。虎党の大歓声の中、全走者がホームを踏んだ。勝負を決める3点打。勝利の立役者は二塁上で控えめに頭を下げた。

 「最近、ふがいない結果が続いていたので少しは貢献できたかなと思います」

 上本らしくインタビューでも照れた表情を見せただけ。ただ個人としても、巨人に負け越した直後のチームにとっても、限りなく大きな一打だった。

 猛虎の先頭で突っ走ってきた上本が止まった。8月の打率は前日まで1割台。巨人3連戦では11打数1安打と沈黙した。見た目にもわかるほど頬はこけた。レギュラーとして初めて経験する過酷な夏。ただ、1つだけ変わらなかったものがある。信念だ。

 「打てなくても自分を追い込むことはないかなと。悩んでも悩まなくても、寝て起きたら明日はくる。準備をしっかりすれば、いいと思うようにしてます」

 1軍と2軍を往復していたころは「結果」という重圧に押しつぶされてきた。その苦い経験から、上本が出した答えがあるという。納得できる「準備」をすれば、後悔はしない-。

 例えば甲子園でも、遠征地でも真っ先にグラウンドに出てくるのは上本だ。1人で黙々と体をほぐす。

 「自分のペースで、ゆっくりとストレッチをしたいなと思って…」

 例えば守備の時、他のだれよりも構えに入るのが早いのが上本だ。打者に最も近い三塁手よりも早い。

 「そうなんですか。分からなかったですが、僕は下手くそなんで、少しでも早く準備しようと思って…」

 言葉はポツ、ポツとしか語らないが、その裏に秘められた意志は強く、固い。不振の間、上本が向き合ったのは相手や運に左右される数字ではなく、自分自身だった。打っても打てなくても、毎日これでもかと準備を積み重ねた。そんな男に、トンネルの出口がくるのは必然だった。

 「疲れがたまらない人はいないと思う。その中でやっていくしかない。まだ(打撃が)戻ったとも思わないですし、気を引き締めてやっていかないと」

 主役になってもポツ、ポツと話す口調は変わらなかった。上本はまた、いつも通りに準備を重ねる。不振に打ちのめされない、たくましくなったトップバッターの姿がそこにあった。【鈴木忠平】