<DeNA9-11広島>◇20日◇横浜

 広島が球団史に残る猛攻だ。13安打を放って球団タイ記録の8試合連続2桁安打をマーク。4回に丸佳浩外野手(25)が逆転満塁弾を放つなど打線をけん引した。広島市の安佐南区、安佐北区で局地的な豪雨による自然災害に見舞われた中、チームは目の前の戦いで一丸となり4連勝。首位巨人とは6月27日以来の2ゲーム差と、接近してきた。

 乱打戦はお手のものだ。2度逆転されても、若鯉軍団に動揺はなかった。2点を追う4回1死満塁、丸の弾丸ライナーが低空飛行のまま、右翼席最前列に突き刺さった。カウントは2-1。2番手小林太の高めに浮いたツーシームをミートした。失投を確実に仕留めた形。進化を象徴する1発となった。逆転の17号満塁弾に「逆転した後に点を取られて嫌な展開だった。何とか1点を、と思っていた」。若きリーダーは一切表情を変えず、クールにダイヤモンドを回った。

 昨季はリーグ4位の85四球。今季はリーグ最多の75四球を選び、シーズン換算で101四球ペースだ。もちろん、四球を狙って打席に入るわけではない。「四球でもいいなという場面は結構ある。そういう場面でフルカウントになった時、以前は無理やり打ちにいくところがあった。そういう意味では、ちょっとは大人になったのかな」と、状況判断が成長した証しだ。

 今は打ちたいという欲求をコントロールできる。1死満塁での1発。四球もOKの場面だった。「いかに投手の投げミスを仕留められるか。そこの部分は少し精度が上がったかなと思う」。その言葉通り、ボール球には手を出さずに値千金弾。昨季調子を崩した夏場も、下降線をたどる気配はない。

 チームは4回途中に早くも10安打を記録し、1972年、2004年にマークした8試合連続2桁安打の球団記録に並んだ。13安打11得点で乱打戦を制した。丸は言う。「単純にヒットが出ればいいわけじゃない。うちの課題はチャンスで1本を出せるか、ですから」。DeNAの10残塁に対して3残塁。勝負どころで得点を重ねた1勝には価値がある。

 19日深夜から20日未明にかけ、広島市の安佐南区、安佐北区で局地的な豪雨に見舞われ、土砂崩れで多数の犠牲者、行方不明者が出ている。丸は「知り合いに電話したりした。些細(ささい)なことかもしれないけど、心身ともに疲れている方々に元気を与えられたら…」と力を込めた。野村監督は「チームの関係者に近い人には、避難されている方もいると聞いた。勝つしかない。勇気づけたい」と誓った。

 23年ぶりのV奪回へ、立ち止まれない理由はいくらでもある。【佐井陽介】

 ▼広島は13安打を放ち、10日阪神戦から8試合連続2ケタ安打。連続2ケタ安打のプロ野球記録は50年松竹の15試合で、広島の8試合は72年7月4~16日、04年8月14~24日に並ぶ球団タイ記録。4回には丸が逆転の満塁弾。丸の本塁打は今季17本目だが、先制4本、同点6本、勝ち越し2本、逆転2本と、14本が肩書付き。17本すべて2点差以内の場面で放ち、殊勲アーチ14本はリーグ最多と貴重な1発が多い。これで首位巨人とは6月27日以来の2ゲーム差に接近。広島が100試合以上消化して首位に2ゲーム差以内は96年9月23日以来。96年は前半戦首位の広島が巨人に逆転されたシーズンだが、今年はここから巨人を逆転できるか。