<日本ハム1-11西武>◇22日◇札幌ドーム

 自他ともに認めるノー文句の“おかわり”だ。西武中村剛也内野手(31)が、今季2度目の1試合2発。自己最多を更新する1試合7打点の大暴れでチームを勝利に導いた。これで本塁打数もトップのオリックス・ペーニャに3本差。主砲のバットが、負ければ自力CS進出の可能性が消える危機を救ってみせた。

 中村もベンチもファンも、打った瞬間それと分かる2発だった。3回の23号3ランは甘く入ったスライダーを逃さず。8回のダメ押し24号満塁弾は、内寄り高め152キロを一閃(いっせん)。いずれも左翼席中段に放り込んだ。「芯で打てたので(2本目とも)感触は良かったです。1本目は1点取った後で、いいバッティングが出来たと思う」と、うなずいた。

 生粋のホームランアーチストだからこそ、分かる手応え。前カード20日ソフトバンク戦(ヤフオクドーム)の1回。左中間への飛球がビデオ判定で本塁打から二塁打に変更された。審判団が確認中、ベンチで待機する中村はヘルメットをかぶったまま。まるでスタンドに届いていないと分かっているかのようだった。自身の打撃論について多くは語らないが、その打球が全てを物語る。この日は、そんな男が納得の感触。会心のふた振りだった。

 交流戦明けから、託されている役割は「4番指名打者」。期待はバットにだけのしかかる。重圧の中、8月の月間打率は1割台と低迷。不振と向き合う中で中村はこう言った。「DHは打席でしか、自分の存在価値を見いだせない。だから打てればいい、じゃなく打たなきゃいけない」。主砲としての強い責任感。その覚悟があるからこそ、「守備がないから楽とかじゃない。打てない苦しさが強いんです」。

 母校・大阪桐蔭の後輩で、プロ1号から3戦連発で沸かせたルーキー森の存在も、確かに刺激にはなった。だがそれ以上に、「仕事ができてないのに、4番で使ってくれている監督(代行)に、何とか結果で返していきたい」という強い思いがある。勝利が第一。だから本塁打タイトルにも「それはどうでもいいですね」と、気を留めなかった。「残り試合もあまりないので、勝たないとダメ」。中村は勝つために、特大の放物線を描き続ける。【佐竹実】

 ▼中村が11年8月10日以来、3年ぶりの満塁本塁打。満塁弾は通算12本目で江藤慎一(ロッテ)ら3人と並んでプロ野球7位タイ。パ・リーグだけで12発は野村(西武)井口(ロッテ)と並んで3位タイとなる。1試合2本塁打は今季2度目、通算26度目だが、満塁弾を含んだマルチ本塁打は初めて。1試合7打点は過去3度あった6打点を抜く自己最多だ。