<巨人4-5阪神>◇27日◇東京ドーム

 主役が阪神マウロ・ゴメス内野手(29)ならば、助演賞は文句なしに鳥谷敬内野手(33)だった。2点を追う8回、連続四死球で無死一、二塁とした。荒れ気味の山口相手にも冷静に対応。2球目の外寄りスライダーを確実にとらえ、ライナーではじき返した。矢のような弾道は、瞬く間に右中間を破った。リーグ屈指の「クリーンアップ」が、終盤の同点そして勝ち越し劇をつくった。

 鳥谷

 (バントも)頭にあったけど、何とか右方向に打てればと。(山口に)甲子園で三振していたので積極的にいこうと思った。

 土壇場で、やっぱり頼りになるキャプテンだ。先頭だった4回は、2ストライクから中前打。6回は1死一塁で三遊間を破り、延長10回には1死からの中前打で出塁して、直後の2ランを呼び込んだ。実に今季6度目となる1試合4安打。通算113度目の猛打賞は、球団4位の吉田義男にあと1に迫る固め打ちとなった。

 やられたらやり返す。苦い思いがある。昨年は8月27日からの巨人3連戦で3連敗し、一気に逆転Vの機運がしぼんだ。「まだ行けるというところまで行って3つやられ、もうダメだとなった。最後まであきらめてはいないけど流れにのみ込まれて、もう、ちょっと離れて無理だという空気というか…」。王者との力量差を突きつけられた。絶望し、屈辱を味わい、無力感だけが残った。

 丸1年がたち、偶然にも似た舞台がめぐってきた。打つだけじゃなく、華麗な遊撃守備でも魅せた。4回に巨人中井のゴロを岩田がはじくと、猛ダッシュでカバーしながら素早い処理と強肩でアウトにした。延長10回には、村田の中前へ抜けそうなゴロを、当然のようにつかんで刺した。

 鳥谷

 明日、勝つか負けるかで、今日の勝ちが生きるか変わってくる。勝って甲子園へ帰れるように。

 プロ11年目。フルイニングで試合に出続け、伝統の一戦でも歴史に刻む歩みを続けている。負ければ自力優勝消滅の危機を踏みとどまった。和田監督は「(8回は)あそこは勝負。トリなら何とかしてくれると打たせた。今日はクリーンアップがいい仕事をしてくれた」と頼もしそうに見詰めていた。

 ▼鳥谷が今季6度目の4安打を放って通算113度目の猛打賞を記録し、球団歴代4位の吉田義男114にあと1とした。今季の猛打賞15度目は大島(中日)に続き2位タイ(他にヤクルト山田も15度)だが、4安打以上6度は両リーグ最多。