<広島3-6ヤクルト>◇28日◇マツダスタジアム

 野球は本当に分からない。広島は先発の前田健太投手(26)が、最下位ヤクルト打線に4回9安打5失点と打ち込まれ、まさかの早期降板で7敗目(10勝)を喫した。絶対的エースで3連勝というシナリオが崩れ、打線も1回の3得点後は沈黙。2位浮上のチャンスを逃し、首位巨人に再び3ゲーム差をつけられた。

 どんな形であれ、勝たなければいけない一戦だった。前田は自らに課せられた責務を痛いほど自覚していた。試合終了の直前、一塁ベンチから戦況を見守る。その表情は「ぼうぜん」という表現が正しかった。

 「悪いなりの投球ができなかった。悪いから打たれるのでは意味がない。そういう時こそ抑えないといけない。悔しい」

 後半戦初の中5日先発。さあ、一気にスパートだ!

 そんなシグナルが込められた一戦で、まさかのKO負けだ。1回表に1点先制されながら、1回裏に打線が3得点ですぐさま逆転。絶対的エースだから、ここで立ち直りたかったが…。3回に1番山田、2番森岡の連続適時打で同点とされる。4回は先頭から3者連続安打で勝ち越しを許し、9番石川にはスクイズを決められた。4回9安打5失点。早すぎる降板だった。

 2連勝で2位阪神に0・5ゲーム差、首位巨人に2ゲーム差まで迫り、エースで3連勝すれば一気に逆転Vムードが高まるところだった。2回表終了後のベンチでは野村監督から直々にフォーム指導を受けたが、修正できなかった。指揮官は「低いところに来ていたけど、球にキレがなかった。中5日に切り替えてギアが入ったところで、残念なのは残念。逆転した中で修正できずズルズルいったのは残念」と、言葉に悔しさをにじませた。

 今季初完封した前回22日阪神戦では139球を投げた。疲労については「(体は)普通だった」と否定したが、明らかに本調子ではなかった。レッドソックスなどメジャー3球団の関係者が鋭い視線を送る中、低めの変化球を拾われる場面が目立った。防御率は2・73となり、リーグトップから陥落。「いつも通り、修正してやるしかない」。シーズンは佳境。もう、エースらしからぬ投球は許されない。【佐井陽介】