<阪神4-3DeNA>◇2日◇甲子園

 52歳は最高のスタートだ。阪神和田豊監督がしみじみ言った。「いやあ、いい誕生日になった」。サヨナラ劇のネクストには、最後の野手関本がスタンバイしていた。最近になって繰り返す「全員野球」が、記念日に実を結んだ。9月2日。会見場を出る指揮官の右ポケットは、膨らんでいた。

 和田監督

 選手たちは最後まで諦めず追っかけてくれた。(9回は)ゴメスのヒットで空気というか、何かあるぞという感じになって、マートンが二塁打でつないでくれて。最後はちょっと神懸かっていたね。

 悔し涙になるところを、うれし涙にした。昨オフにFA宣言で去っていった久保に、もてあそばれた。1回無死二塁から15人連続で凡退。6月9日に完封されたソフトバンク・スタンリッジ同様、元同僚への悪夢がよぎった。苦境を救ったのが、耳打ちして送り出した今成。12年の誕生日は新井良がサヨナラ2ランしており、「ダブルりょうた」でバースデータクトは負けなしの2連勝となった。

 試合前に誕生会があった。報道陣から特大ケーキとともに、自身が入団した年で日本一になった1985年産の赤ワインを「日本一になって開けましょう」と贈られた。「誕生日がいつも(シーズンの)微妙な時期になりますが、残り26試合、ファンの皆さんと一緒に喜ぶ1カ月に」。タテジマ一筋30年目、入団以来の誕生日は9勝9敗になった。

 和田監督

 我慢の8月、勝負の9月と言ってきた。今日の勝ちは勢いづくと思うので、明日が大事になってくる。もう1ついい勝ち方ができれば。

 負ければ首位巨人に3・5ゲーム差、4位DeNAには4・5差に迫られる危機だった。6回に「我慢」と打たせたメッセンジャーが踏ん張り、厳しくも優しく見守る上本が3安打。スタメン抜てきの新人梅野は突破口を開いた。サヨナラと猛抗議の最中に本塁に放置されていた「記念球」は、行方を見詰めていたチーム関係者のファインプレーで死守。甲子園で育った指揮官が、「今一番欲しいもの」と言っていた白星をもぎ取った。一丸でつかんだウイニングボールが、何よりのプレゼントになった。【近間康隆】