<ヤクルト3-5阪神>◇15日◇神宮

 その復活劇にだれもが胸をなで下ろしたことだろう。8回、3-1と勝ち越して、なお1死満塁。阪神鳥谷敬内野手(33)がヤクルトの左腕、久古のストレートを完璧にセンター前へはじき返した。2点適時打でとどめを刺した。

 鳥谷の表情は苦悩など、まったく周囲に感じさせない、いつものポーカーフェースだった。だが、この日の第2打席まで、22打席連続無安打。7回、ナーブソンの変化球を中前打したのが、じつに23打席ぶりのヒットだった。直前カードの広島3連戦は、試合前練習に姿を見せなかった。現在、歴代3位となる1453試合連続出場中の鉄人に、明らかに異変が起こっていた。

 「ヒットが出るに越したことはないけど、シーズンはいい時も、悪い時もある。考えて、考えて、というよりはね…。1本出て、気持ちは楽になりました」

 心境こそ明かしたが、苦悩の舞台裏は語らなかった。鳥谷が遊撃にいること、ヒットを打つこと、それが周囲にとっては当たり前になっていたからこそわずかでも異変が起これば、衝撃は大きくなる。鳥谷はこれからも、そんな“鉄人の宿命”を背負っていく。

 9月初連勝を飾った和田監督が最後にほっとしたように言った。

 「やっと、トリにヒットが出てね。1本出れば、状態がいい時の打撃ができているから」

 鳥谷が打って、勝つ。猛虎にとっての“日常”が戻ったことが、希望や安心感を生み出す。苦心の9月戦線に光がさしてきた。【鈴木忠平】

 ▼鳥谷が7回に中前打を放ち、10日巨人戦第2打席からの連続打席無安打を22で止めた。自身最長は12年9月5日巨人戦第4打席~同11日ヤクルト戦第5打席までの24打席で、あと2打席にまで迫っていた。