<阪神9-3中日>◇19日◇甲子園

 火の玉が、球場を包んだ「おかえり!」という虎党の声援への答えだった。9回に今季初登板。その初球。阪神松田遼馬投手(20)は自己最速タイの152キロ直球でストライク。リョウマが帰ってきた瞬間だった。

 「声援に気合も入ったし、うれしかった。0で抑えられてよかった」

 2年連続で故障に苦しむ中で開幕を迎えた。昨年は右肩痛。勝利の方程式の一角へと期待がかかった今季は2月のキャンプ中、右肘痛で離脱した。

 「ケガをしてしまったことを悔やんでもしょうがない。この時間をプラスにしたかった」

 悔しさで下を向きそうになったが、1軍マウンドを目指し、再起への道を歩み始めた。右肘の筋力トレを中心に体づくりに時間をかけた。手首に負荷をかけて行うだけでなく、負荷をかけずに回数を重ねるなど、初めて取り組んだものもある。進化を目指すとともに、過去の自分も反省。「冷やすことが一番ダメだって聞いたんです。クーラーでもダメ。2回もケガしてからやっとって遅いですけど」。連日、気温40度を超える鳴尾浜のグラウンドやブルペン。寝苦しい夜でさえ、ベッドの上でも右肘にサポーターを欠かさなかった。

 最後の打者、中日森野を146キロ直球で三飛に打ち取った。3者凡退。鶴岡が笑顔で歩み寄ると、ようやく白い歯をこぼした。9連戦は福原、安藤らベテラン中継ぎ陣で乗り切った。ここにきて新戦力が加わった。「残り試合は少ないですけど、しっかり投げていきたい。今後は僅差の場面で投げられるように頑張りたい」。11球の復活劇。リョウマがシーズン終盤の起爆剤になる。【宮崎えり子】<阪神松田のリハビリここまで>

 ◆2月の春季キャンプでケガ

 沖縄・宜野座キャンプに参加していたが、右肘に違和感を覚えて離脱。再発防止を重視して、前半戦はリハビリに費やした。

 ◆ブルペン投球再開

 6月8日にブルペン投球を再開し、連投にも取り組んできた。

 ◆フリー打撃登板

 7月8日、故障後初めて打者相手に投球した。

 ◆紅白戦登板

 7月23日2軍紅白戦で春季キャンプ以来の実戦登板。3者凡退に抑え、この日最速は146キロ。

 ◆公式戦登板

 8月3日ウエスタン・リーグ、オリックス戦(鳴尾浜)で公式戦初登板。3者凡退でこの日最速は148キロ。

 ◆自己最速更新

 8月20日同ソフトバンク戦(鳴尾浜)で自己最速を152キロに更新。昨年11月、「侍ジャパン」日本代表強化試合の台湾戦で更新していた151キロを超えた。