<セCSファーストステージ:阪神1-0広島>◇第1戦◇11日◇甲子園

 レギュラーシーズンと変わらない光景がこの日もあった。勝利の喜びを分かち合うハイタッチの中心に虎の守護神がいた。

 呉昇桓

 1-0でバッター1人1人、1球1球が大事になる試合でした。ボールがよかったというより、結果がよかった。緊張感もあったけど、マウンドでは気持ちよく投げられたと思います。

 9回、マウンドに向かうと虎党から大声援が送られた。点差はわずかに1点。「ちょっと違う雰囲気だった。でもいつも通りを心掛けてマウンドに上がれた」。短期決戦の緊張感でも、背番号22の背中は頼もしく映った。

 3番ロサリオにカウント2-2から外角カットボールで空振り三振。本塁打王エルドレッドには直球3球勝負だった。最後は外角高めへの150キロでバットを振らせた。最後は5番松山。カウント1-2から外角へ150キロの石直球を投げ込んだ。3者連続の空振り三振-。鮮烈な12球だった。レギュラーシーズン同様、防御率0・00と好相性の広島相手に1度もフェアゾーンに打球を飛ばさせなかった。

 前日10日の決戦直前の練習前、中継ぎ左腕高宮と並んでグラウンドに入った。通訳を介しながら日本語講座が開かれていた。「今日は早く帰ろう」。何度も何度も口にし、流ちょうになっていった。新たに習得したその言葉通り、マウンドでの長居は無用とばかりに、あっという間に自身の仕事を終えてベンチに帰還。CS初セーブを挙げた。仕事を全うした呉昇桓投手(32)の足取りは軽やかだった。【宮崎えり子】

 ▼阪神は福留の本塁打で1-0勝利。プレーオフ、CSの1-0勝利は6度目で、1-0本塁打は81年第1戦柏原(日本ハム)12年1S第2戦バレンティン(ヤクルト)に次いで3本目。阪神は日本シリーズ、CSを通じて初のポストシーズン1-0勝利となった。