<セCSファイナルステージ:巨人2-4阪神>◇第3戦◇17日◇東京ドーム

 阪神和田豊監督(52)は努めて平静だった。大和の超ファインプレーで3連勝を決め、9年ぶりの日本シリーズへ一気に王手をかけた。ベンチ裏では勝者が分厚い手を激しくぶつけ合う。歓喜の声も響く中、指揮官は喜びをかみ殺すようだった。

 CS5試合目で、初めて先制された。4回には巨人長野の美技に2死満塁を防がれた。2点を追う展開になった。だが「この球場の2点はあってないようなもの。全く重い空気はなかった。勝負をかけたことに意義がある」。

 6回だ。先頭上本が出塁し、1死後、4番ゴメスの時に二塁盗塁した。アウトになれば意気消沈する場面だが「4回に取れなくて、動きを入れようと。あそこで流れというか空気が変わったよね」。代打福留で同点。さらには「とっておき」という代打関本、新井貴を次々つぎ込んだ。メッセンジャーを84球で代えるリスクも承知で、攻めのタクトだった。

 意義はあった。続く7回に勝ち越した。8回にはセットアッパー福原ではなく、20歳の松田を送り込む。「ここは若い力に託した」。シーズン36度の逆転勝ちはリーグ最多。腹の据わった今の和田監督は、打つ手がうまくいく。

 年頭に「大勝負の年。腹をくくる」と臨んだ1年だ。Bクラスでの借金生活、3位危機や自身の去就問題も乗り越えながら、ここまできた。05年以来となる最高の舞台へ「明日決めるとかじゃなくて、とにかく1戦1戦。コーチや選手にも『日々初戦』という気持ちで臨もうと言っているので」。宿敵撃破でセの代表へ。最高のシナリオが待っている。【近間康隆】