<SMBC日本シリーズ2014:ソフトバンク5-2阪神>◇第4戦◇29日◇ヤフオクドーム

 土壇場での4番の凡退が敗戦につながった。サヨナラ負けを喫し、阪神マウロ・ゴメス内野手(30)は早々にロッカーから出てきた。カメラのフラッシュを浴びると、思わず顔をそむけた…。勝負の分岐点は延長10回だった。1死一、三塁の勝ち越し機で打席へ。サファテが投げた2球目は真ん中に浮いたフォークだった。思い切り引っ張ったが、ゴロは三塁松田の正面へ。5-4-3の併殺打になり、一瞬で勝機が消えた。

 首をひねりながら「いい投球をされて何とか打ちたかったけど、相手が上回った」と話すのが精いっぱい。4番が打てなかったから負けた。消しようがない事実を受け止めるしかなかった。この日は主砲の快音を聞くことができなかった。

 無我夢中で1年間、全力で走ってきた。来日1年目の今季は109打点を挙げて打点王に輝いた。プレーオフでも勝負強さは消えない。クライマックスシリーズの8打点はセ・リーグの最多記録を更新した。日本シリーズも奮闘する。25日の第1戦で3打点の活躍。それでも気を緩めない。

 28日の試合前、フリー打撃では普段よりも右方向の打球が多かった。体が突っ込まないよう、軸足に体重を残しながら打ち込んでいた。26日の第2戦でソフトバンク武田の緩いスライダーに体は前方に泳がされた。「今日も、大隣はチェンジアップがあるから」。体のバランスを修正し、本番に臨んでいた。異国で工夫しながら何度も乗り越えてきた。

 ゴメスは言う。「まだ終わったわけじゃないから。明日、頑張ります」。窮地に追い詰められても、4番らしい立ち居振る舞いで力を振り絞る。【酒井俊作】